第67回

神崎菜摘(森林総合研究所関西支所)

昆虫嗜好性線虫の分類と自然史

要旨

「線虫」とは、脱皮動物下界線形動物門(Infraorder Ecdysozoa, Phylum Nematoda)に属する無脊椎動物の総称であり、地球上でもっとも多様な動物群の一つである。その推定種数は、いまだに統一見解が見出されていない状態であるが、少なくとも数百万種が存在すると考えらえる。また、生理、生態的に多様であり、その生息域も、深海から高山、地下深く、南極まで幅広い。しかし、彼らの共通した構造、体のほぼすべてが軟組織で構成され、長距離移動器官(翅、脚)をもたないという特質ゆえ、乾燥耐性と移動能力が極端に小さい。このため、高湿度条件での自由生活をするものがほとんどであり、また、長距離の移動においては、他の動物を利用する。この際、最も一般的に利用されるのは、昆虫に代表される節足動物であり、様々な様式で昆虫(節足動物)を利用する線虫を昆虫(節足動物)嗜好性線虫と総称する。すなわち、「昆虫嗜好性線虫」とは、単一起源の分類学的グループを指すのではなく、生態的なグループであり、複数の分類(系統)群にまたがる。昆虫嗜好性線虫には、昆虫を移動分散のための乗り物としてのみ利用する(寄生関係にはない)便乗者、移動中に虫体から栄養摂取をする寄生者、捕食寄生者、昆虫を積極的に殺生し、自らの基質として利用する昆虫病原線虫などが知られる。 これら昆虫嗜好性線虫の研究材料としての利点は、再分離のしやすさ、すなわち、特定の昆虫種を採集してそこから分離することにより、目的とする線虫種の分離が可能であるという点、昆虫の生態的特性が明らかになっている場合には、それに付随して線虫の生態的特性が調査しやすいという点、また、昆虫利用様式を明らかにすることにより、生態的特性を明らかにしやすいという点が挙げられる。加えて、昆虫嗜好性線虫には、生物学的モデル種に近縁なものも多く、これらを培養株として維持することにより、サテライトモデル系の構築など、分類、自然史研究のみならず、他の分野への応用的利用が可能になる。 今回は、これら昆虫嗜好性線虫に関して、基礎的な分類、一般的生活史を紹介するとともに、一部、サテライトモデル種に関しても紹介したい。

ポスターはこちら

日時
2020年 1月 24日(金)16:00−18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A205
懇親会
予定しています。参加希望の方は向峯(mw.bioeco[at]gmail.com)までご連絡ください。

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