要旨集

第76回

塩見こずえ (東北大学)

海鳥の帰巣行動と認知生態

要旨

繁殖期の海鳥は、[巣を出発する → 海で餌を取る → 巣に帰る] という移動を繰り返してヒナを育てています。種によっては数100 km〜1000 km以上離れた海域で餌を取ることもありますが、餌場から巣へと確実に戻る帰巣能力を持っています。このセミナーでは、オオミズナギドリという海鳥の帰巣中の移動パターンについて、これまでの研究でわかったことを紹介します。 また、帰巣行動の研究をきっかけに最近気になり始めた鳥類の脳サイズの傾向についても少しお話しする予定です。

第76回は新型コロナウイルスの影響を受け、ウェブ会議システムZoomを用いて開催いたしました。

ポスターはこちら

日時
2020年 11月 27日(金)16:00−
参加方法
前日までにこちらから参加登録をお願いいたします。参加登録をしていただいた方に、当日昼ごろに招待用のURLをお送りいたします。※Zoomの人数制限の関係で、参加可能人数の上限に達した場合は先着順で招待メールを送らせていただきます。ご承知おきください。
懇親会
zoomで行いました。

第75回

松浦優 (琉球大学)

セミと冬虫夏草の切っても切れない共生関係の進化

要旨

冬虫夏草とはセミやガなどの昆虫や節足動物に寄生して宿主の体を乗っ取り、珍妙な子実体を形成する糸状菌類の総称である。日本では多くの冬虫夏草が知られているが、経験豊富な一部の愛好家をのぞいてそれらの発生を日常的に目にすることは稀であり、神秘的な存在ともいえる。中国では一部の種が漢方として高値で取引されたり、アメリカでは宿主の行動を操るゾンビ菌としてゲームを産み出したりもしている。本講演ではそんなちょっと変わった冬虫夏草類の絶対共生菌への進化に関する演者の研究について概説する。ちなみに、演者は大学院生時代、とても身近でありながらほとんど研究されていなかったセミ類の共生微生物の研究を開始し、絶対共生細菌(バクテリア)についてPCR法でちまちまと調べていたものの、当時最新のゲノム解析手法を駆使する海外の研究者にどんどん先を越され、ある意味傍観者としてセミ類の共生系の奇異な進化に驚く日々であった。しかし、時を同じくしてその景色をまたガラッと変えてしまうような事実がむしろ演者の地味なアプローチで明らかとなったのである。この機会に、その事実が判明して研究が成就するまでの裏話にできるだけ触れ、現状や今後の展望についても話したい。

第75回は新型コロナウイルスの影響を受け、ウェブ会議システムZoomを用いて開催いたしました。

日時
2020年 11月 20日(金)16:00−
参加方法
前日までにこちらから参加登録をお願いいたします。参加登録をしていただいた方に、当日昼ごろに招待用のURLをお送りいたします。※Zoomの人数制限の関係で、参加可能人数の上限に達した場合は先着順で招待メールを送らせていただきます。ご承知おきください。
懇親会
zoomで行いました。

第74回

千頭康彦 (総合研究大学院大学)

無翅昆虫から昆虫類の性的二型を再考する

要旨

メスとオスの特徴たる性的二型は種々の動物の繁殖を支える。性的二型は如何に進化してきたのだろうか。性的二型の進化は、種内レベルでの小進化スケールでは性淘汰や性的対立理論により、近縁種間レベルでの大進化スケールではゲノム上のシス調節領域の変更により凡そ説明がなされる。一方で、その大進化を可能としたシステムの起源は未だ不明な点が多い。この問いに答えるには、高次分類群レベルでの比較に基づく“megaevolution”(言うなれば、巨進化)スケールのアプローチが必要であろう。昆虫類の性的二型は種間で極めて多様であるが、多くの場合、共通してDoublesex(Dsx)タンパク質による制御を受ける。Dsxはメスとオスの分化にかかわる転写因子であり、そのシス調節領域の獲得は性的二型の進化に重要とされる。しかし、Dsxの知見は完全変態類の幾つかの分類群に偏る傾向にあるため、巨進化スケールでの解析はほとんどなされていない。この現状に対して、演者は有翅昆虫類の姉妹群であり、翅や交尾を欠くといった昆虫類の祖先的な特徴を保持するシミ目のマダラシミThermobia domesticaに着目して、Dsxの解析を行なっている。本セミナーでは、先に巨進化解明に資する新規モデル昆虫たるマダラシミを紹介する。その上で、本種におけるDsxの機能を紹介し、他種昆虫類の知見との比較を通じ、巨進化スケールでのDsxの進化を考察する。さらに、Dsxに基づく昆虫類の性的二型の解釈についても展望を交えつつ議論したい。

第74回は新型コロナウイルスの影響を受け、ウェブ会議システムZoomを用いて開催いたします。

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日時
2020年 11月 13日(金)16:00−
参加方法
前日までにこちらから参加登録をお願いいたします。参加登録をしていただいた方に、当日昼ごろに招待用のURLをお送りいたします。※Zoomの人数制限の関係で、参加可能人数の上限に達した場合は先着順で招待メールを送らせていただきます。ご承知おきください。
懇親会
行いました。zoom。

第73回

橋本洸哉(国立環境研究所)

生物間相互作用が導く生態毒性学の新たな展開

要旨

人為攪乱は生物多様性に対して、直感とは異なる影響を与えることがある。たとえば、農薬は標的となる病害虫や雑草の制御を目的として開発されているが、時として、標的以外の生物の減少や別の病害虫の増加といった思いもよらない結果をもたらす。このような結果をもたらす要因として挙げられるのが、捕食-被食関係・競争関係・共生関係といった生物間相互作用である。ひとたび農薬によって標的生物が負の影響を受けると、その影響は相互作用を介して他の生物にも間接的に波及する。この間接的な効果によって、人為攪乱の影響は連鎖的に群集に拡散し、生物多様性に対して相互作用の考慮抜きには予測できない影響をもたらす恐れがある。ところが従来、生態系に対する化学物質の影響を研究する分野である生態毒性学では、農薬の生物に対する影響評価は、単一種を用いた実験室内での直接毒性の検証という、相互作用を考慮しないアプローチで行われてきた。そのため、野外では普遍的に起こっているはずの、相互作用を介した農薬の影響の理解は未だに進んでいない。本セミナーでは、発表者の所属するチームが取り組んでいる「相互作用を介した農薬の影響評価」に関する研究のうち、(1)生物のハビタット利用に依存する農薬の影響、(2)農薬施用が相互作用の強度に与える影響、の2つを紹介したい。

第73回は新型コロナウイルスの影響を受け、ウェブ会議システムZoomを用いて開催いたします。

日時
2020年 11月 6日(金)16:00−
参加方法
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懇親会
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第72回

石川麻乃 (国立遺伝学研究所 ・ゲノム・進化研究系 生態遺伝学研究室 )

トゲウオから探る生活史進化の分子遺伝機構

要旨

生物がどう生まれ、成長・繁殖し、死ぬのかを決定する生活史の変化は、適応度を直接左右する最も重要な進化プロセスの一つであり、その理解は進化学や生態学のみならず生物学全体にとって重要である。一方で、生活史はそれ自体、多くの形態、生理、行動形質が統合して成立する複雑な形質であり、その違いをもたらす遺伝子や遺伝的変異を同定するのは、時に大きな労力を伴う。生活史に関わるたくさんの形質群の進化の中で、たった一つの遺伝子やほんの小さな遺伝的変異を同定することにどんな意味があるのか?見えてきたのは、生活史の違いをもたらす遺伝子や遺伝的変異の、生物種を超えた共通性だった。例えば、淡水環境でトゲウオの稚魚生存率を左右し、淡水進出能力の違いを生む不飽和脂肪酸合成酵素のコピー数の違いは、幅広い系統の魚種でも海産種に比べて淡水種で多く、魚全般において淡水進出の鍵であると考えられた。また、繁殖の季節性についても、同じ遺伝子が異なる地域で何度もその進化に関わっていた。つまり、遺伝子や遺伝的変異に注目することで、幅広い生物群において生じた生活史の収斂進化のパターンや、そのターゲットになりやすいゲノム内の領域や経路が明らかになりつつある。本発表では、講演者が多彩な生活史を示すトゲウオを用いて同定してきた生活史の多様化の鍵となる遺伝子や遺伝的変異について紹介するとともに、生活史の違いをもたらす遺伝子や遺伝的変異の共通性をもたらす分子・生態メカニズムについて議論したい。

第72回は新型コロナウイルスの影響を受け、ウェブ会議システムZoomを用いて開催いたします。

日時
2020年 10月 16日(金)16:00−
参加方法
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懇親会
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第71回

松村健太郎 (香川大・農学研究科)

コクヌストモドキにおける活動性への選択圧が繁殖形質に及ぼす影響

要旨

動物は動くことでエネルギー資源を消費させる。そのため、動くことは、繁殖形質などへの資源配分に大きな影響を与え、しばしば活動性と繁殖成功のトレードオフを生じさせる。このトレードオフは、活動性の個体差が集団内で維持される主な原因として考えられるが、不明な点も多く残されたままである。演者はこれまでに、甲虫のコクヌストモドキを対象として、歩行活動性の高低に対してそれぞれ人為選抜実験を行い、遺伝的に活動性の高い系統と低い系統を確立した。本セミナーでは、この活動性の異なる選抜系統間で、雌雄それぞれの繁殖形質を比較した調査結果をご紹介させていただき、活動性が繁殖形質に及ぼす影響について議論したい。

第71回は新型コロナウイルスの影響を受け、ウェブ会議システムZoomを用いて開催いたします。

日時
2020年 10月 9日(金)16:00−
参加方法
前日までにこちらから参加登録をお願いいたします。参加登録をしていただいた方に、当日昼ごろに招待用のURLをお送りいたします。※Zoomの人数制限の関係で、参加可能人数の上限に達した場合は先着順で招待メールを送らせていただきます。ご承知おきください。
懇親会
行いました。zoom。

第70回

新里高行(筑波大・システム情報系)

パラドクスを解く群れたち

要旨

砂山のパラドクスは砂つぶの集まりがいつ砂山に切り替わるのかを問う。つまり、量が質にいつ変化するのかを問題にするものである。このような問題は群れに限らずにあらゆる場面で出会う。(無機物と生命へ、刺激の統合から意識へなど)では、動物の群れはいつから「群れ」をなすということができるのだろうか? 本セミナーではまず、本パラドクスを近年脳科学で注目を集めている統合情報理論(IIT)を用いて読み解く。IITを通して、群れ内部で起こっている部分と全体を交差させるプロセスの存在を指摘し、BOID等のこれまでのモデルはこのプロセスを無視したものであることを確認する。後半では、まとまることとばらけることが共立するような新たなモデルを提示し、パラドクスを解決する群れの振る舞いを肯定的に展開する方向を示す。(時間に余裕があれば、最近作成中のモデルも紹介しつつ議論したい。)

第70回は新型コロナウイルスの影響を受け、ウェブ会議システムZoomを用いて開催いたします。

日時
2020年 9月 25日(金)16:00−
懇親会
行いました。zoom。

第69回

水元惟暁(OIST・進化ゲノミクスユニット)

シロアリの集団行動の進化プロセス解明を目指して

要旨

社会性昆虫の巣の建設や、魚の群れ行動など、動物の集団行動は個体レベルの単純な行動規則と、個体間相互作用によって生み出される。では、このようなシステムの進化プロセスは、どうすれば理解できるだろうか。進化発生生物学では、生物の個体発生を系統種間比較することで、その形質の進化プロセスを推定してきた。ここから類推するに、動物の集団行動も個体レベルの行動から集団行動が発生する過程を系統種間比較することで、その進化プロセスを調べることができるかもしれない。本講演では、シロアリのトンネル形成に着目し、個体レベルの行動規則と、集団レベルのトンネルの分岐パターンとのメカニカルな関係について、種間比較を行った研究成果を紹介したい。更に、これまでの研究で分かってきたことに基づき、集団行動の進化プロセスの研究の方向性を議論するとともに、現在進行中のプロジェクトについても紹介する。

第69回は新型コロナウイルスの影響を受け、ウェブ会議システムZoomを用いて開催いたします。

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日時
2020年 9月 18日(金)16:00−
懇親会
ありました。zoom。

第68回

内海俊介(北海道大学・北方生物圏フィールド科学センター)

生態ー進化動態の理解をスケールアップさせる

要旨

生態学的過程と進化学的過程は同じ時間スケールで生じるため、両者の間には双方向の密接な相互作用がある。このような相互作用のうち、迅速な進化をベースにした時間スケールでの生態-進化動態(あるいは生態-進化フィードバック)について、多くの理論研究や総説研究が発表され、現在ではその概念は広く認識されるようになっている。しかし、生態-進化動態に対する実証的なアプローチは、室内培養・メソコスム・圃場実験というように精密に操作された実験系がほとんどである。そのため、複雑な野外での実態については、その重要性も含めて明らかになっていない。その一方で、進化的・遺伝的救助、外来種管理、生態系管理など、応用的な場面における生態-進化動態について関心や懸念は高まりつつあり、この間に横たわる大きなギャップを埋めることはきわめて重要な課題である。本セミナーでは、生態-進化動態の理解を「スケールアップ」させるべくわれわれが行っている研究のうち、以下の視点での最新の知見について紹介し、議論したい:(1) 根粒共生系、(2) 広域での群集-進化動態、(3) 森林再生。

第68回は新型コロナウイルスの影響を受け、ウェブ会議システムZoomを用いて開催いたします。

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日時
2020年 9月 11日(金)16:00−
懇親会
ありませんでした。

第67回

神崎菜摘(森林総合研究所関西支所)

昆虫嗜好性線虫の分類と自然史

要旨

「線虫」とは、脱皮動物下界線形動物門(Infraorder Ecdysozoa, Phylum Nematoda)に属する無脊椎動物の総称であり、地球上でもっとも多様な動物群の一つである。その推定種数は、いまだに統一見解が見出されていない状態であるが、少なくとも数百万種が存在すると考えらえる。また、生理、生態的に多様であり、その生息域も、深海から高山、地下深く、南極まで幅広い。しかし、彼らの共通した構造、体のほぼすべてが軟組織で構成され、長距離移動器官(翅、脚)をもたないという特質ゆえ、乾燥耐性と移動能力が極端に小さい。このため、高湿度条件での自由生活をするものがほとんどであり、また、長距離の移動においては、他の動物を利用する。この際、最も一般的に利用されるのは、昆虫に代表される節足動物であり、様々な様式で昆虫(節足動物)を利用する線虫を昆虫(節足動物)嗜好性線虫と総称する。すなわち、「昆虫嗜好性線虫」とは、単一起源の分類学的グループを指すのではなく、生態的なグループであり、複数の分類(系統)群にまたがる。昆虫嗜好性線虫には、昆虫を移動分散のための乗り物としてのみ利用する(寄生関係にはない)便乗者、移動中に虫体から栄養摂取をする寄生者、捕食寄生者、昆虫を積極的に殺生し、自らの基質として利用する昆虫病原線虫などが知られる。 これら昆虫嗜好性線虫の研究材料としての利点は、再分離のしやすさ、すなわち、特定の昆虫種を採集してそこから分離することにより、目的とする線虫種の分離が可能であるという点、昆虫の生態的特性が明らかになっている場合には、それに付随して線虫の生態的特性が調査しやすいという点、また、昆虫利用様式を明らかにすることにより、生態的特性を明らかにしやすいという点が挙げられる。加えて、昆虫嗜好性線虫には、生物学的モデル種に近縁なものも多く、これらを培養株として維持することにより、サテライトモデル系の構築など、分類、自然史研究のみならず、他の分野への応用的利用が可能になる。 今回は、これら昆虫嗜好性線虫に関して、基礎的な分類、一般的生活史を紹介するとともに、一部、サテライトモデル種に関しても紹介したい。

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日時
2020年 1月 24日(金)16:00−18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A205
懇親会
ありました。金治。

第66回

第1回ミニシンポジウム:
生き物が見せるオカシなフシギな社会のつくりかた

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日時
2019年 12月 5日(木)15:00−18:00
場所
筑波大学 第3エリア 理科系修士C棟 103
懇親会
ありました。総合研究棟A。

第65回

吉田勝彦(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)

コンピュータシミュレーションを用いた生態系進化の研究

要旨

一般に生物の進化にかかわる現象は非常に長い時間を必要とする。例えば、環境変化に対して生態系がどのように進化して応答するのか、のようなテーマについては、実際に実験を行って確かめることは非常に難しい。その問題を解決する一つの手段としてコンピュータシミュレーションがある。コンピュータシミュレーションは時空を越えられるという長所があり、どんな時代のどんな生態系に関する研究も可能になる。そこで演者は独自の生態系進化モデルを開発し、環境撹乱に対する生態系進化の研究を行ってきた。その中で今回は以下の二つの研究、(1)独立に進化した二つの生態系が融合した時に何が起こるのかについての研究(Yoshida & Tokita 2015, Sci. Rep.)と、(2)一次生産量変動を受けながら進化した生態系では好き嫌いなく色々な種類の餌を食べられる生物(ジェネラリスト)と特定の餌しか食べない生物(スペシャリスト)のどちらが有利なのかを解析した研究(吉田2005, 日本生態学会誌)について発表する。

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日時
2019年 10月 4日(金)16:00−18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A205
懇親会
ありました。びすとろ椿々 Biviつくば店・つくばクラフトビアフェスト。

第64回

森山実(産業総合研究所・生物プロセス研究部門)

都市に増えたクマゼミの謎を探る

要旨

夏になれば鳴き声が聞こえ、公園にいけば目にすることができる馴染み深い昆虫であるセミ。その個体数や種構成の変化は人々が容易に認知できるため環境指標生物として有望な生物である。実際、日本各地における近年のセミ相の変化は毎年の様にメディアに取りざたされている。とりわけ顕著なのが大阪で、市内の多くの公園ではほぼクマゼミの独占状態となっている。こうしたセミ相の変化は地球温暖化や都市化などの人為的な環境改変が原因であると科学的な根拠のないまま流布されている状況であった。本セミナーでは発表者が生理生態学的アプローチを用いて、大阪市内におけるクマゼミ優先化の原因究明に取り組んだ研究内容について紹介する。そこでは、一般的に昆虫類の個体数制限要因になると考えられている温度耐性ではなく、セミ類のユニークな生活史戦略に基づいた独自の作用経路を介して、環境変化がセミの個体群動態に影響していることを示唆する結果が得られた。

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日時
2019年 7月 19 日(金)16:00−18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A107
懇親会
ありました。TSUTSUMIYA。

第63回

庄子晶子(筑波大学・生物科学専攻)

海鳥を追跡せよ!その見えざる行動に迫る

要旨

海鳥は生涯のほとんどの時間を海で過ごす。しかし、彼らを追跡する技術がなかったことから、海鳥についてわかっていたのは繁殖地での観察によるもので、海での行動は長い間謎に包まれていた。2000年代に入り、動物自体に記録計を取りつけて行動を記録する「バイオロギング技術」が急速に発達したことで、これまで観察できなかった海での行動が明らかになってきた。一見すると目印のない広い海洋で、海鳥は何を手がかりに餌を探すのだろうか?変動する海洋環境に対して海鳥はどのように応答するのだろうか?どうして同じ餌環境下でも繁殖に失敗する個体と成功する個体がいるのだろうか?これらの疑問を解決するため、私は繁殖モニタリングとバイオロギング技術を駆使して、海鳥の「見えざる行動」を調べてきた。発表では、海鳥の意思決定に着目し、それらが採餌効率や繁殖成績の向上とどのように関連し、どのような利益をもたらすのか、研究結果を紹介したい。

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日時
2019年 6月 14 日(金)16:00−18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A107
懇親会
ありました。楽蔵。

第62回

深澤圭太(国立環境研究所)

動物の複雑なホームレンジをシンプルに理解する統計モデリング

要旨

多くの動物はホームレンジをもって行動する。不均質な環境下においてそのパターンがどのように決まるかを明らかにすることは、個体群の空間構造を理解するうえで欠かせない。本研究では、個体が地理障壁の影響を受けながら移動することで様々な形状のホームレンジを形成するプロセスを標識再捕獲データから推定する手法を開発した。この手法では、個体の存在確率の空間分布を考え、その時間変化をホームレンジ中心への移流とランダムな拡散から成る移流拡散方程式で記述している。標識個体がある場所・時点で再確認される確率は個体の存在確率と検出率の積であり、存在確率は移流拡散方程式の数値解を求めることで近似的に得られる。その解は、短い時間では初期位置の影響を受けるが、長い時間では初期位置に依存しない定常的な分布になる。移動障壁などの不均一な環境の効果は、拡散係数を環境依存とすることで明示的に扱うことができる。 このモデルを富山県東部のツキノワグマを対象とした自動撮影カメラによる個体識別調査データに適用し、土地被覆が拡散係数に与える影響と堅果の豊凶がホームレンジ中心への引力に与える影響を検討した。その結果、河川および裸地の存在がツキノワグマにとっての移動障壁となることや、堅果の凶作年においてはホームレンジ中心への引力が低下することが推定値より明らかとなった。標識再捕獲モデルに個体の存在確率の「流れ」を組み込んだアプローチは、複雑で個体ごとに異なる行動プロセスの統一的な理解に向けて有効なツールになると考えられた。

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日時
2019年 2 月 15 日(金)16:00−18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A107
懇親会
ありました。魚鮮水産。

第61回

内海邑(明治大学 先端数理科学インスティテュート)

相利共生系の成立と進化的維持(英題:Evolutionary emergence and maintenance of mutualistic symbiosis)

要旨

相利共生系には、共生関係への“ただ乗り”を防ぐ仕組みが不可欠である。そのため、相利共生系の成立過程を理解するには、この仕組み自体の進化を明らかにする必要がある。本セミナーでは、ただ乗りを防ぐ仕組みの進化について二つの研究を紹介する。一つ目は、ただ乗りをする裏切り者への協力を打ち切る“制裁”の進化である。制裁によって、裏切り者は淘汰されるが、その一方で、ただ乗りされる危険がなくなるため、制裁自体は無用の長物になってしまう。そのため、制裁の進化的維持は難しいとされてきた。そこで、演者らは数理モデルを用いて、この矛盾を解消し、制裁が安定的に維持される条件を明らかにした。二つ目は、親子間で共生者を受け継ぐ“垂直伝達”の進化である。原生生物などの細胞内共生系では、宿主と共生者の細胞分裂が同調しており、それにより、共生者が過不足なく宿主の娘細胞に分配され、垂直伝達が実現している。しかし、一般的に宿主の分裂は共生者よりも遅いため、共生者にとって遅い宿主との分裂同調は増殖率の低下を引き起こし、適応的にはみえない。そこで、演者らは共生者の分裂率の進化を数理モデルにより分析し、共生者が分裂を自粛するように進化し得るのかどうかを明らかにした。

Mutualism based on reciprocal exchange of costly services must avoid exploitation by “free-riders”. Since mechanisms that discourage free-riding are essential to mutualism, their evolution is a central question to be investigated for understanding the evolution of mutualism. I will describe two topics about the evolution of these mechanisms. The first topic is about the evolution of “sanction”, to penalize free-riding partners by halting nutrient supply to them. The second topic is about the evolution of “vertical transmission” which is implemented by synchronized cell division between unicellular hosts and endosymbionts.

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Peter Schausberger(Department of Behavioural Biology, University of Vienna; Sugadaira Research Station, University of Tsukuba(JSPS Invitation Fellowship L18534);)

Behavioral plasticity of plant-inhabiting predatory mites shaped by early life experiences

要旨

Behavioral plasticity is variation in behavior of the same genotype induced by environmental stimuli. Behavioral variation may be short-lived and easily reversible or long-lasting and persistent depending on the life stage, age and state of the organism, the behavioral context and the nature of the stimuli. Conceptually, behavioral plasticity may be categorized as, mutually non-exclusive and often interacting, trans-generational (TBP), developmental (DBP) and activational (contextual) (ABP). TBP may be considered a subtype of DBP and refers to, usually persistent, behavioral variation based on environmental stimuli in previous, including the parental, generation(s); DBP encompasses phenomena where experiences result in changes of the underlying neural substrate, allowing time-lagged persistent behavioral changes based on memory of previous experiences (i.e. learning); ABP builds on existing neural networks, does not require neural modification, and allows immediate short-term contextual changes. Here, I review how and why (i.e. proximate and ultimate aspects) early life experiences shape DBP of plant-inhabiting predatory mites in foraging, anti-predator and social contexts. For illustration of the conceptual framework, I also touch on topically pertinent examples of TBP (parental effects) and ABP, and their interactions with DBP. Prey experiences made by generalist predatory mites in early life, such as Neoseiulus californicus and Amblyseius swirskii, enhance foraging by adult predators on matching prey (DBP). In contrast, prey experiences by adult A. swirskii result in prey-unspecific changes in foraging behavior, qualifying as ABP. Both non-associative and associative learning types are at play; polar prey cues are attractive yet non-polar cues are repellent. In P. persimilis, maternal experience with a given spider mite type influences the prey preference of offspring (TBP). Social enrichment and familiarization early in life profoundly and persistently affect grouping behavior, cannibalism, and anti-predator behavior of Phytoseiulus persimilis (DBP). The complexity and sophistication of DBP is illustrated by interference in early dual-task learning (at simultaneous presence of multiple stimuli) in N. californicus, and fine-tuned behavioral adjustment based on memorizing multiple contextual features in group-living P. persimilis. Subject to data availability, fitness benefit-cost trade-offs of behavioral plasticity are highlighted. I conclude with emphasizing the relevance of early life experiences and DBP for the supposed occurrence of mite personalities.

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日時
2018年 10 月 26 日(金)15:15−18:00
     15:15−16:30: 第一講演者
     16:45−18:00: 第二講演者
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A107
懇親会
ありました。筑波大学 総合研究棟A A407。

第60回

小林和也(京都大学 フィールド科学教育研究センター森林生態系部門森林情報学分野)

有性生殖の謎と群集生態学

要旨

生物は厳しい自然環境にさらされることで洗練され効率化が進んだ自己増殖システムである。にもかかわらず、一見なんの差もない環境に多様な生物が共存していたり、一見無駄としか思えない性質を保持していたりする。もし自然選択が最も効率よく増殖するシステムを選抜しているのなら、その場所に最適化したごく少数の生物種だけが存在する生態系になるのではないだろうか?
有性生殖は、無性生殖と比べて多くのコストが必要になるにも関わらず、自然界で普遍的な繁殖システムである。この現象に私が興味を持ったきっかけとなる特殊なアリの生態を紹介し、性の謎に挑戦した研究をご紹介したい。
これらの研究の過程で得られたアイデアが、有性生殖が種内競争を激化させることで多種共存を維持しているというアイデアである。このアイデアについても、シミュレーションと数理モデルを用いて解説する。これらの結果を踏まえて生物多様性の維持メカニズムについて議論したい。

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日時
2018年 7 月 20 日(金)16:00−18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A205
懇親会
ありました。たたきの一九

第59回

筑波嶺セミナーとの共催でした。

川津一隆(龍谷大学 理工)

「行動」と「動態」をつなぐ:非線形時系列解析が拓く新しい生態学

要旨

野外に出ると,生き物が食う-食われる,助け合うなど様々な行動で相互に影響している様子をみることができる.その多くは印象的で,現代の生態学はこれらの‘観察’できる種間行動が個体群や群集動態を駆動する,と信じて進展してきた.しかしながら,その証拠,つまり自然生態系で種間相互作用論を検証した研究は実は存在しない.その理由は相互作用研究にまつわる三つの呪いによる.まず観測の困難さ:種間相互作用は単一のモノではなく無数の行動の集合である.次に解析の困難さ:相互作用に内在する非線形性が動態を複雑にする.最後に操作の困難さ:種間関係というコトにどう手を加えれば良いのか? 演者らは,この問題の突破口として非線形系列解析の一手法であるEDM(Empirical Dynamic Modeling)に着目した研究を行っている.EDMは観察から得られる時系列データを経験的なモデルとみなすことで,本来のシステムの情報なく要素間の因果関係や相互作用の強さを推定する手法である.本講演では,その中から特に,EDMを1)室内実験系,2)野外群集系に適用した研究を紹介することで,EDMの呪いを解く力とその先の生態学のあり方について議論したい.

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日時
2017年 12 月 14 日(金)16:00−18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A107
懇親会
ありました。Mott's bar

第58回

京極大助(龍谷大学 近藤研究室 特別研究員)

性選択が繁殖干渉に与える影響:マメゾウムシ2種での実証研究

要旨

種間相互作用の詳細なメカニズムを理解することは、どのような選択圧が形質進化を介して種間相互作用を改変するかを理解する上で重要である。近縁種間の相互作用としてこれまで重要視されてきたのは資源競争であるが、最近になって繁殖干渉(間違った配偶者認識による繁殖過程での負の種間相互作用)の重要性が指摘されるようになってきた。しかし、繁殖干渉のメカニズムが詳細に分かっている系はまだほとんど無い。これまで発表者は、種間相互作用のモデル系であるアズキゾウムシ・ヨツモンマメゾウムシ2種間での繁殖干渉のメカニズムを明らかにすべく研究に取り組んできた。これら2種の間ではほぼ一方的な繁殖干渉により、アズキゾウムシのオスがヨツモンマメゾウムシのメスの産卵数を低下させる事が先行研究からわかっている。一連の実験から、(i)アズキゾウムシのオスとヨツモンマメゾウムシのメスの間で頻繁に起きる種間交尾がメスの産卵数を低下させていること、(ii)オスの交尾器に付属する刺状の構造がメスを物理的に傷つけることがこの産卵数低下に寄与しているらしいことが明らかとなった。刺状の構造がより発達しているアズキゾウムシのオスほどヨツモンマメゾウムシのメスを傷つけやすく、また刺状の構造は精子競争(性選択)の産物であると考えられることから、マメゾウムシ2種間の繁殖干渉の強さには種内の性選択の強さが関係している可能性が考えられた。そこでアズキゾウムシを性選択あり・なしの処理で複数世代にわたり飼育する実験進化を行い、繁殖干渉能力が進化するかを調べた。その結果、性選択を受けたアズキゾウムシのオスは性選択を受けていないオスに比べてより強い繁殖干渉能力を示した。いっぽうで、期待された交尾器形態の進化は認められず、性選択が繁殖干渉を強めたメカニズムは不明であった。これらの結果から、種内の性選択による形質進化が繁殖干渉の強さに影響すること、また交尾器形態とそれ以外の形質が複合的に繁殖干渉の強さに寄与しているらしいことが明らかとなった。発表当日は時間の許す範囲で他の実験データも示しつつ、参加者とディスカッションを行いたい。

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日時
2017年 7 月 14 日(金)16:00−18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A A205
懇親会
ありました。塚田農場

第57回

筑波大学テニュアトラック普及・定着事業若手セミナーとの共催でした。

安岡法子 (奈良女子大大学院人間文化研究科)

性転換するカキ類の繁殖生態

要旨

性転換は,貝類,ゴカイ,甲殻類,ナマコ,魚類など,様々な海洋生物において報告されている現象です。性転換がなぜ起こるのかを明らかにするには,野外で同一個体を追跡して性転換を直接観察する必要があります。また,直接観察することで,オスからメスといった一方向の性転換だけでなく,双方向性転換が起こっているかどうかも明らかにすることができます。本発表では,固着性二枚貝のカキ類に着目して,同一個体を追跡した野外実験により得た結果をもとに,カキ類がどのような性をもつのかについて紹介します。そして,カキ類に寄生者がいた場合に,性転換にどういった影響を与えるのかについても紹介します。

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日時
2016年 10 月 27 日(木)15:30−17:00
場所
筑波大学 第三エリア 理科系棟 A308
懇親会
ありました。酒房まつり

第56回

鈴木俊貴(総研大・先導科学/学振SPD)

鳥たちに言葉はあるか?音声による情報伝達とその生態的適応

要旨

耳を澄ませばどんな場所でも必ずと言っていいほど聞こえる音。それは鳥の鳴き声だ。都市にも山にも農村にも,鳥たちはとてもありふれていて,季節を問わず鳴き声を交わし合う。春の訪れを告げる小鳥のさえずりや秋の風物詩ともいえるモズの高鳴き。鳥たちは鳴き声によってさまざまにコミュニケーションをとっている。  しかし,こんなに身近な鳥たちの鳴き声が,どのような意味を持ち,彼らの生存や繁殖においてどのように役立っているのか,長いあいだ謎に包まれていた。鳥たちの鳴き声は私たちの言葉とどのように似ていて,どのように異なるのだろうか??  私は,シジュウカラ科鳥類を対象に鳴き声の意味や情報伝達の適応的意義を研究してきた。本講演では,鳴き声にみられる音響構造の特異性や文法規則に着目し,それらが情報の伝達にどのようにかかわり,発信者および受信者にどのような適応度上の利益をもたらすのか,最新の研究成果を含めて紹介したい。また,行動生態学,比較認知科学,言語学の融合的なアプローチが動物のコミュニケーション研究にどのような進展をもたらしうるか,その可能性についても議論したい。

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日時
2016年 2 月 12日(金)14:30開始
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A107
懇親会

第55回

筑波大学テニュアトラック普及・定着事業若手セミナーとの共催でした。

奥野 正樹 (岐阜大 応用生物科学部 特別協力研究員)

社会性昆虫における菌類との寄生と共生

要旨

すべての生き物は単独で生きているわけではなく、他の生き物や環境などと相互に影響 しあって、様々な形質を獲得して生きています。社会性昆虫においても同様ですが、生物間 相互作用は人間の目には直接見ることのできない菌類との関係も含みます。菌類とどのように 折り合いをつけるかは、社会性昆虫にとっては最重要課題となっています。  今回の発表では、病原性糸状菌に対する対抗手段として社会性昆虫がどのような戦術を 採用しているのかについて、アリ、ハチ、シロアリで発見したことを紹介します。そして、 社会性昆虫でみられる共生について、菌類であるキノコを栽培するシロアリで調査した内容 について一部紹介します。これらの寄生と共生の研究を通じて、昆虫の生きるための戦術の 面白さをお伝えできればと考えています。

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日時
2015年 12 月 18日(金)15:00〜17:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A110
懇親会
ありました 。

第54回

生命地球科学セミナーとの共催でした。

泉賢太郎 (国環研 PD)

底質中の餌量変動に対する底生生物群集の応答:上総層群国本層における生痕相解析と地球化学分析

歌川 史哲 (筑波大 生命環境 博士課程)

伊豆半島下田地域に分布する白浜層群の岩相序と化石層序

要旨

日時
2015年 10 月 30日(土)16:30〜19:00
場所
筑波大学 春日エリア 7A105講義室
懇親会
ありました 。

第53回

富菜 雄介 (Biol. Sci., Univ. of Cincinnati)

ヒルの神経行動学 --感覚受容からの行動制御の"汎神経的解明"を目指して--

要旨

 左右相称動物に共通する特徴のひとつは神経節や脳にみられる神経系の中枢化である。このような動物において感覚・行動・認知を成立させる生理メカニズムを理解するためには、多数の神経細胞がシナプス接続することで構成された神経回路網の働きをリアルタイムで調べることが不可欠である。また分子レベルから行動のメカニズムを理解する、あるいは行動の神経基盤がどのように進化してきたのか理解するうえでも、神経回路を構成する細胞の構成・働きを知ることが重要である。しかし、脳内神経回路を構成する個々の細胞すべてを同定し、高い時空間分解能で神経活動を測定・解析することは、哺乳類など巨大脳動物ではほとんど実現不可能である。医用ヒルHirudoは、行動制御を担う神経回路を感覚入力から運動出力に至るまで詳細に調べることが可能な実験動物として、50年以上前から利用され続けてきた。我々はヒルの神経節におけるほぼ全ての神経細胞から同時にあらゆる神経活動を記録解析する"汎神経的解析"を行うため、両側型膜電位イメージング法を確立した。この技術により、局所湾曲反射や遊泳行動といったヒルが示す主要な行動に関わる細胞集団の神経活動を網羅的に測定することに成功した。本講演では、神経行動学における唯一の原則ともいわれるKrogh’s principleを導入として、ヒルを利用した神経行動学の概説(なぜヒルなのか?)から始めたい。そのうえで、我々が確立したメソドロジーを紹介し、"神経生理メカニズム"の比較生物・進化学の可能性についても言及を行いたい。

向井 裕美 (森林総研 学振特別研究員)

カメムシのコミュニケーションから探る昆虫の巧みな情報利用戦略

要旨

 生物は,自然界に存在する情報をどのように利用し,自らのふるまいを決定するのだろうか.生物の行動を規定するのは,多様な情報である.その情報を受容するのは,生物の感覚である.長い進化の歴史を経て,生物は,現在の巧妙な感覚受容システムを構築してきた.その仕組みや進化プロセスを明らかにすることで,生物の意思決定システムの原理を知り,彼らの感じる世界を垣間見ることができるかもしれない. 動物のコミュニケーションは,シグナル(信号)と呼ばれる情報刺激を個体間でやり取りすることで成立する.シグナルを正確に受信し,発信するためには,洗練された感覚受容システムの構築が必須である.私は,カメムシの多様でユニークなコミュニケーション系をモデルとして,利用されるシグナルやシステムが,(1)どのようなプロセスを経て進化を遂げたか,(2)どれだけ効率的に利用されているか,を明らかにする研究に取り組んでいる.本講演では,異なるふたつの場面におけるコミュニケーションの例を挙げて,カメムシの巧みな情報利用戦略の進化プロセスと巧妙なシステムについてご紹介する.

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日時
2015年 9 月 4日(土)16:15〜
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A 211
懇親会
ありました 。

第52回

平山 寛之 ( 株式会社 野生動物保護管理事務所 )

アメンボと卵寄生蜂の適応的な意思決定

要旨

 被食者にとって捕食の回避は生存に直接寄与する重要な戦略である。一方、捕食者にとって、被食者を発見し利用するための採餌戦略は重要である。被食−被食関係において、被食者の捕食による死亡の大部分が特定の捕食者種によって起こる場合、被食者はその捕食者種に特化した回避戦略をもつことが期待される。一方で、対する捕食者も、餌種に特化した採餌戦略をもつと考えらえる。本講演では、アメンボとその卵のみを利用する卵寄生蜂を用いた一連の研究を紹介する。アメンボは卵寄生蜂がアクセスしにくい水面下の深い位置に卵を産み付けることで卵寄生の頻度を低下させる。しかし、潜水を伴う産卵には様々なコストが存在する。こうした潜 水と産卵にかかわる意思決定を、卵寄生のリスクと潜水のコストから調査した成果を紹介する。また、卵寄生蜂は、水面下に存在し、手がかりの少ないアメンボ卵を発見しなければならない。卵寄生蜂の潜水の意思決定にかかわる要因についても紹介したい。

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日時
2015年 6 月 13日(土)15:15〜17:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A 205
懇親会
ありました 。

第51回

大澤 隆文 (ダルハウジー大・院・環境学専攻)

気候変動下での自然保護区における保全生物学

要旨

 自然保護区は、種や生態系の地理的分布がいつまでも変わらないという静的な考え方に基づいて、各国に設置されてきた。しかし、今後(気候が変動する中で)このような前提は通用しなくなる可能性が近年は指摘されている。また、気候 変動に伴って南方や低地から分布を拡げてきた種を学術上「外来種」と見なすのかといった新たな問題も浮上しつつある。気候変動に対する適応策としての移住支援や、温暖な気候に適応した遺伝子の人為的な導入といった取り組みについても、賛否両論がある。  本セミナーでは、こうした気候変動に付随する保全生物学上の課題や話題、また「保護区間の回廊による連結」といった古典的な考え方や現状を先ず紹介する。その上で、海外で研究が進みつつある「気候変動脆弱性評価」、「対話による生態系シナリオ予測」、「特定の種を保全するための適応策」等、自然保護区レベルでの気候変動への適応に向けた研究手法や最近の事例を紹介する。日本で既に積極的に取り組まれている種の将来分布適地の推 定等は、今回の主眼には含めない。これらの発表を通じ、今後当該分野でどのような研究が考えられるかについて議論したい。

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日時
2015年 4月30日(木)16:00〜18:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A 205
懇親会
ありました 。

第50回

香川 幸太郎 (東邦大・東大)

適応放散における雑種形成の役割を探る

要旨

適応放散は、単一の祖先から多様な生態学的ニッチに適応した複数の種が急速に進化する現象であり、そのメカニズムが盛んに研究されてきた。いくつかの代表的な適応放散で、放散の初期に起きた種間での雑種形成が多様な形質の出現を促し、多様なニッチへの急速な適応を促進した事が示唆されている。生態学的ニッチが類似した個体同士で同類交配する傾向が強ければ、雑種形成を介したニッチの多様化と連動して種数も増加し、適応放散に至ると予想される。しかしながら、雑種形成は種間の遺伝的分化を崩し、多様化を抑制するとも言われており、必ずしも適応放散を促進するとは限らない。そこで本研究では、雑種形成によって適応放散が促進される可能性を理論的に検証し、その条件を探るため、個体ベース・モデルによる適応放散のシミュレーションを行った。様々な条件でシミュレーションを繰り返した結果、雑種形成が適応放散において果たす役割は生態学的ニッチに基づく同類交配の強さに依存して変化することが分かった。同類交配の強さが中程度のとき、親種間の種分化を保ちながら雑種個体群が形成され、生態的多様性と種数がともに増加することが予測された。

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日時
2015年 4月24日(金)16:00〜18:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A107?
懇親会
<ありました 。スペインバルonce, ?(二次会: 鉄板職人ちゃんちゃら)/dt>

第49回

Eric Wajnberg ( INRA, France )

Genetic Algorithms. What are they, and how can we use them in solving problems in population biology

要旨

Genetic Algorithms are numerical, computer-assisted methods used to find values of parameters that maximize a given criterion. They are inspired by Darwin’s theory of evolution, and are thus simulating an evolutionary process to get to the best (fittest) solutions. These methods were invented in the seventies, and ?since then ?they have been used in a variety of fields, including optimizing military weapons, designing aircrafts, robotics, and even art, to mention just a few. There are now progressively being used to solve problems in ecological science, and especially in behavioral ecology, i.e., to find optimized behaviors animals should adopt to maximize their reproductive output. The seminar will present didactically what Genetic Algorithms are and how they work. Then, a couple of examples showing how we are using them to address problems dealing with the behavioral ecology of parasitoid insects will be presented.

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日時 / Date
2015年 4月7日(火) 16:00−18:00 / Tue.Apr. 7thin 2015 (16:00-18:00)
場所 / Place
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A 2F  A205 / room A205 @ Laboratory of Advanced Research A (総合研究棟A), Univ. of Tsukuba
懇親会
ありました。炭火焼肉トラジ。

第48回

テニュアトラック若手セミナーとの共催

井藤 大樹( 近畿大学 農学研究科 水圏生態学研究室 )

里地・里山の淡水魚 オイカワ類の分類と多様性

要旨

生物の世界はまだまだ不思議かつ未解明な事象に満ち溢れており、私たちを魅了し続けています。その生き物の 生態や行動、多様性のなぞに迫り、それを読み解こうとする人たちがいます。 里山生態系には実に多くの生物が生息していますが、私たちの身近にいるけれど特に目立たない存在であるために、「雑」の字でひとくくりにされてしまう生物種がいます。 本講演では、「雑魚」と呼ばれる淡水魚の中からオイカワ類を取り上げ、その多様な生態と分類のおもしろさについてお話ししてもらいます。

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日時
2015年 1月21日(木)15:30−17:00
場所
筑波大学 生物農林学系統 F607会議室
懇親会
ありました。

第47回

久世 濃子 ( 国立科学博物館・人類研究部、学振特別研究員 )

Slowest Life-History ~オランウータンの繁殖生態~

要旨

オランウータン(Pongo_sp.)はヒトに近縁な大型類人猿(霊長類)の一種で、東南アジア の熱帯雨林に生息している。現存する最大の樹上性動物、出産間隔は陸棲哺乳類で 最長(6~9年)、哺乳類では珍しい「雄の二型成熟」等々、オランウータンは哺乳類・ 霊長類の中でも際だった特徴を数多く持っている。発表者はここ10年、ボルネオ島や 日本国内の動物園などで、オランウータンの雌の繁殖生態を研究してきた。本セミナ ーでは、発表者自身の研究成果を交えつつ、雌雄それぞれの特異な繁殖戦略や、変 動の激しい食物環境に対して、生理的・行動的にオランウータンがどのように適応して きたのか、ヒト(Homo sapiens)を含む近縁種と比較し、オランウータンの特異な生活史、 生態の進化史を解き明かすことを試みる。

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日時
2014年12月11日(木)16:00〜18:0
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A205
懇親会
ありました 。Casanova。

第46回

小島 渉 (東大 情報学環、学振特別研究員) 

カブトムシの自然史を探る

要旨

カブトムシはとても人気のある昆虫ですが、野外での生態にはよくわかっていない点が多くあります。本セミナーでは、幼虫、成虫の生態に関する研究成果を一題ずつ紹介します。一つ目は幼虫の集合性に関する研究です。カブトムシの幼虫は同種の幼虫が発するある化学物質を介して野外で集合を作ることがわかりました。この物質を同定するに至った経緯や、集合をつくる適応的な意義についてもお話します。後半では成虫の捕食者に関する研究を紹介します。カブトムシの訪れる樹液の周りには、何者かによって腹部を食べられたカブトムシの残骸が散乱していることがあります。犯人を調べるために、つくば市の雑木林に赤外線センサーカメラを設置したところ、カブトムシの捕食者のみならず、樹液を利用するさまざまな生き物の姿を捉えることができました。これらの映像を紹介しながら、つくば市の自然の魅力についてお伝えします。

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日時
2014年11月13日(木)16:00〜18:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A205
懇親会
ありました 。

第45回

J. Cohen (The Rockefeller University)

Taylor's power law of fluctuation scaling and abrupt biotic change

要旨

Recent paleoclimatic and paleoecological studies and the 2013 National Academy of Sciences report on Abrupt Impacts of Climate Change: Anticipating Surprises highlight the need to understand better, and develop early warnings of, abrupt changes in the environment and abrupt changes in biota associated with smooth changes in the environment. I will describe recently discovered theoretical examples that predict that smooth changes in the environment can produce abrupt changes (infinite jumps) in a key parameter of Taylor's power law of fluctuation scaling, one of the most widely verified empirical patterns in ecology. A comparable real-world singularity could adversely affect fisheries, forestry, agriculture, conservation, and public health.

R. M. Dorasio (SESC U.S. Geol. Survey )

TAccounting for Imperfect Detection and Survey Bias in Statistical Analysis of Presence-only Data

要旨

During the past decade ecologists have attempted to estimate the parameters of species distribution models by combining species presence locations observed in opportunistic surveys with spatially referenced covariates of occurrence. Several statistical models have been proposed for the analysis of presence-only data, but these models have largely ignored the effects of imperfect detection and survey bias.?I describe a model-based approach for the analysis of presence-only data that accounts for errors in detection of individuals and for biased selection of survey locations.
I develop a hierarchical, statistical model that allows presence-only data to be analyzed in conjunction with data acquired independently in planned surveys. One component of the model specifies the spatial distribution of individuals within a bounded, geographic region as a realization of a spatial point process. A second component of the model specifies two kinds of observations, the detections of individuals encountered during opportunistic surveys and the detections of individuals encountered during planned surveys.
Using mathematical proof and simulation-based comparisons, I demonstrate that biases induced by errors in detection or biased selection of survey locations can be reduced or eliminated by using the hierarchical model to analyze presence-only data in conjunction with counts observed in planned surveys. I show that a relatively small amount of high-quality data (from planned surveys) can be used to leverage the information in presence-only observations, which usually have broad spatial coverage but may not be in- formative of both occurrence and detectability of individuals. Because a variety of sampling protocols can be used in planned surveys, this approach to the analysis of presence-only data is widely applicable. In addition, since the point-process model is formulated at the level of an individual, it can be extended to account for biological interactions between individuals and temporal changes in their spatial distributions.

M. L. Taper (Montana State University)

Data-cloning for likelihood based inference for hierarchikal models in ecology:confidence intervals, hypothesis testing, and model selection.

要旨

The success of model-based methods in phylogenetics has motivated much research aimed at generating new, biologically informative models. This new computer-intensive approach to phylogenetics demands validation studies and sound measures of performance. To date there has been little practical guidance available as to when and why the parameters in a particular model can be identified reliably. Here, we illustrate how Data Cloning (DC), a recently developed methodology to compute the maximum likelihood estimates along with their asymptotic variance, can be used to diagnose structural parameter non identifiability (NI) and distinguish it from other parameter estimability problems, including when parameters are structurally identifiable, but are not estimable in a given data set (INE), and when parameters are identifiable, and estimable, but only weakly so (WE).
The application of the DC theorem uses well-known and widely used Bayesian computational techniques. With the DC approach, practitioners can use Bayesian phylogenetics software to diagnose non identifiability. Theoreticians and practitioners alike now have a powerful, yet simple tool to detect non identifiability while investigating complex modeling scenarios, where getting closed-form expressions in a probabilistic study is complicated. Furthermore, here we also show how DC can be used as a tool to examine and eliminate the influence of the priors, in particular if the process of prior elicitation is not straightforward. Finally, when applied to phylogenetic inference, DC can be used to study at least two important statistical questions: assessing identifiability of discrete parameters, like the tree topology, and developing efficient sampling methods for computationally expensive posterior densities.

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日時
2014年10月13日(月)9:00〜12:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A205
懇親会
ありました 。Q't フードコート

第44回

原野 智広 さん(総合研究大学院大学・先導科学)

進化を起こして適応進化を検証する

要旨

行動、形態あるいは生態的形質の適応進化の解明は進化生態学の主軸であるが、標的とする形質の進化を野外の生物で観測するのは困難である。実験室では、形質を人為的に進化させることが可能であり、それによって形質の適応進化を検証することができる。そのアプローチの1つは、飼育下の生物の形質を人為選択によって進化させるというものである。他には、シミュレーション上で形質を進化させるというアプローチもある。これら2つのアプローチそれぞれを利用した研究を本講演で紹介する。1つ目の話題では、性的対立を取り上げる。性的対立の2つの型(遺伝子座間および遺伝子座内性的対立)を解説し、アズキゾウムシのメスの交尾行動に対する人為選択を用いた研究からの結果を基に、性的対立がもたらす進化の仮説を検討する。2つ目で紹介するのは、系統樹と種の形質値データから、進化シミュレーションによって方向性選択を検証する手法を適用した研究である。本研究では、ネコ科の現生種の中で上顎犬歯が長くなる方向への選択を検出し、この選択の強さを非常に長い犬歯を発達させた化石種における選択と比較することを試みる。

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日時
2014年9月18日(木)16:00〜18:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A205
懇親会
ありました 。イタリアン酒場ビストロ椿々。

第43回 

Chris Elphick (University of Connecticut, USA)

Extinction risk in tidal marsh birds as sea levels rise: changing habitat and demographic processes

要旨

Climate change is predicted to affect many organisms.Specialist species, especially those restricted to habitats that will?diminish under climate change, are presumably most vulnerable. ?High?latitude and high elevation species have received much attention, but?coastal species threatened by sea-level rise are also at risk.?Saltmarsh sparrows Ammodramus caudacutus are tidal marsh endemic?birds, representative of species that use coastal marshes. High tide?flooding is the main cause of nest failure, and nesting habitat is?limited to higher-elevation marshes that flood during spring tides.?Demographic data suggest a high probability of extinction by?mid-century. ?Other tidal-marsh nesting birds likely face similar?fates, albeit not so rapidly. ?Evidence also suggests that?northeastern US marsh habitats are rapidly changing in a manner?consistent with increased tidal flooding and that habitat restoration?is failing to provide suitable conditions for the most vulnerable?species that use these marshes.

Thomas W. Sherry (Tulane University, USA)

Effects of nest depredation and weather on reproductive success and population control in a migratory songbird: Are summer and winter decoupled?

要旨

Control of migrant bird populations remains poorlyunderstood. We combined a field experiment (baffles limiting accessto nests by scansorial predators) with modeling long-term nesting?success of American redstarts (Setophaga ruticilla) to assess effects?of multiple variables on nesting success and population dynamics. Theexperiment doubled nesting success, showing importance of scansorial?mammals, primarily red squirrel. Success of unbaffled nests was most?influenced by sciurid nest predator abundance and May temperature, but?also by June rainfall and nest age. Population density had no effect?on nest success in our study, but did in another redstart study?involving different predators. Nesting success predicted 66% of the?variation in annual summer population growth (lambda). Our resultsdocument (1) the value of identifying nest predators, (2) multiplefactors affecting reproductive success both directly and indirectly,and (3) ecological decoupling of summer predator-mediated reproductionversus winter food-limited adult survival.

Mauro Fasola (Pavia University, Italy)

Long-term trends of breeding herons and egrets, and their foraging ecology in ricefields of Italy

要旨

Breeding herons and egret were monitored since 1972 in Northwestern Italy, an area of 57,591 km2 with large surfaces of rice cultivation (2,000 km2). The heronries increased from 40 to 130, and the nests peaked in 2000, up to 23 times the initial number for Grey Herons. This spectacular increase was due to lower human-induced mortality, to climatic changes, and to changes in rice cultivation practice. But since 2000, a decreasing trend has become evident. In order to check the influence of rice cultivation practices on population trends, we compared the results obtained in 2013-2014 with those 1977-2000, about the following topics. 1) Changes in chicks diet; some staple prey (amphibians) have diminished, while new prey of recent colonization (the invasive Procambarus clarkii) have increased. 2) Changes in the submerged rice, studied using satellite imagery; compared to 100% submersion until 1990, the submerged surface in 2013 were <50%. 3) Foraging success of the breeders in agricultural versus seminatural foraging habitats. A modeling is under way of the influence of these changes in prey availability, of the climatic changes, and of other factors, on these declining heron populations.

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日時
2014年 8 月16日(土)16:00〜18:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A111
懇親会
ありました 。筑波大 総A ラウンジ

第42回

岡田 賢祐 さん(岡山大学 大学院 環境生命科学)

オオツノコクヌストモドキにおける負け癖の適応的意義

要旨

  多くの動物で餌や配偶相手など限られた資源をめぐる争いが観察されている。個体は生涯を通して何度も闘争を経験し、その経験がしばしば次の闘争に影響することがある。古くから、勝利を経験した個体は次の戦いの勝率が上がり(勝ち癖)、敗北した場合はその逆になることが(負け癖)、幅広い分類群で報告されている。この現象は二つの仮説で説明できることが提案されている(ただし、両者は排他的ではない):1つは、個体が闘争経験を基に自身の行動を変える(self-assessment hypothesis);もう一方は、匂いなどの手がかりから、個体が対戦相手の闘争経験を判断し、行動を変える(social-cue hypothesis)。具体例を挙げると、前者は記憶や学習による行動の修飾であり、後者は対戦相手の過去の闘争による外傷や出血を判断材料にして、個体が行動を変えることである。
 ここでは、オオツノコクヌストモドキのオスを例として、どのように闘争経験による行動修飾が適応度に影響するか議論したい。本種のオスは大きな大顎を持ち、メスをめぐる戦いをするが、メスには大顎はない。勝利経験は次の対戦の勝率に影響を及ぼさないが、敗北経験から4日間、オスの勝率は0%近くまで下がることが分かっている。最初に、敗北後にどのような行動修飾が起こるのかを調べた。次に、なぜ修飾時間が4日間なのか理論的に検証するとともに、敗北経験がオスの繁殖戦術に影響を及ぼすかを調査した。さらに、敗北経験による行動修飾の生理的・遺伝的基盤についても報告する予定である。

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日時
2014年7月24日(木)16:30〜18:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A205
懇親会
ありました 。炉端 稲田屋

第41回

竹中 明夫 さん (国立環境研究所、生物・生態系環境研究センター)

効率的な保護区の選択と生物の分布パターン 〜基礎と応用のあわいにて〜

要旨

 自然保護区を設定する場合、さまざまな種や生態系の要素を満遍なく含むように保全対象地を選んで、全体として効率のよい保護区をデザインするという考え方があります。そうした保護区のデザインは、生物の分布パターンに強く依存します。たとえば、種の多様性が一番高い地点にすべての種がまとまって分布しているなら、その地点さえ守ればすべての種をカバーできます。そうではなく、種が互いにまったく無相関に分布しているならば、すべての種をカバーしようと思うと大きな面積の保護区が必要となります。
私は、さまざまな種をカバーするためにどれだけの面積の保護区が必要なのかという応用生態学の問題をきっかけにして、多種の分布の相関関係の解析という基礎的な問題に取り組みはじめました。セミナーでは、満遍なく種をカバーする保護区の作り方、多種のあいだの分布の相関と必要な保護区サイズの関係、種の分布パターンをタイプ分けする手法、日本国内でのさまざまな分類群(シダ、チョウ、トンボ、鳥類、哺乳類、淡水魚類など)の分布にひそむ内部構造の抽出の試みなどについて紹介します。分布パターンの解析の方法論や、生物の地理的な分布の理解についてご意見をいただけることを楽しみにしています。

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日時
2014年5月15日(木)16:30〜18:30
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A205
懇親会
ありました 。クルーズ。

第40回

中寺 由美 さん (アムステルダム自由大学)

雌雄同体の繁殖戦略

要旨

性選択をやっていると、ひしひしと雌雄同体への迫害を感じます。よく注目される昆虫やほ乳類などの雌雄異体とは対照的に、巻貝やミミズといった雌雄同体動物の性選択については、ごく限られた知見しかありません。そのおかげで、雌雄同体の繁殖生態は、いろいろユニークな発見ができる研究の「穴場」でもあります。そんな雌雄同体の性選択研究を普及するために、本セミナーでは、六月に公式審査される私の博士論文を紹介したいと思います。私は、雌雄同体の腹足類における文献調査をし、淡水性巻貝モノアラガイを用いて室内実験をして交配前・交配後プロセスを調査してきました。さらに、フィールド調査を行い、野生集団における乱交度を推定しました。そして、(1) 本種では体サイズと齢がオス役かメス役をやるかという交配パターンを左右する (2) 交配後の繁殖成功には交配相手の貯精機能が重要な役割を果たす (3) 交配相手から精しょうタンパク質を受け取ると次の交配時にオス機能が下がることなどが、新たにわかってきました。

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日時
2014年5月12日(月)16:30〜18:30
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A107
懇親会
ありました。季彩かがり。

第39回

つくばE3セミナー・生命地球科学セミナーと共催

中井 亮佑 さん(国立遺伝学研究所)

辺境微生物を追う

要旨

私の関心は辺境微生物の生 態と系統進化であり、これまで深海・南極・砂漠などのいわゆる極限環境に生息する微生物を調べてきた。また現在は、生物サイズの極限―サイズ辺境―として の極微小生物も研究対象としており、濾過除菌フィルターを通り抜ける小さな微生物の培養を試みている。その結果、終生を極小サイズで過ごすナノ微生物や、 多様な細胞形態を持つ奇妙な微生物が様々な環境から分離された。幾つかの微生物は綱レベルでの新系統であり、私たちの足下にはまだまだ未知の生物が存在す ることを予感させた。本発表を通して、これまでのフィールド調査研究を紹介するとともに、辺境微生物の生き様を議論したい。

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日時
2014年2月19日(水)16:30〜18:00
場所
国立環境研究所 研究本館1・3階 第2会議室
懇親会
ありました。あじくら。

第38回

「筑波大学テニュアトラック普及・定着事業 第20回若手セミナー」と共催

鈴木 紀之 さん(東北大学 東北アジア研究センター保全生物学分野)

昆虫の不合理な行動を適応から読み解く

要旨

自然選択の考えにもとづくと、生物はその環境に適した行動をとるように進化すると予測されます。しかし、私たちの身の回りには生存や繁殖にとって最適とは思えない行動をとっている種類が少なくありません。私は、こうした一見すると不合理な行動さえも自然選択の立場から上手く説明できたときに、進化がもたらす意外性と普遍性に感動します。 今回の発表では、テントウムシが成長に好ましくないエサを選んで食べていること、そのテントウムシに繁殖行動を乱す病原菌が広く感染していることについて検討します。昆虫の研究を通じて、自然選択の概念が身の回りの自然を理解するために欠かせないツールであることを伝えていきたいと思っています。

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村井 良徳 さん(国立科学博物館・植物研究部)

高所に生育する植物の紫外線防御物質

要旨

紫外線(特に、波長280-320 nmのUV-B)は、植物のDNA、脂質、タンパク質などに傷害を与えるが、高所においてはその線量が低所に比べて顕著に増加することが報告されている。有害な紫外線に対して植物は、紫外線を吸収する特性があるケイ皮酸誘導体やフラボノイドなどのフェノール化合物を葉の表皮などに蓄積して、内部の組織を保護している事が、主にモデル植物や作物などを用いた研究により明らかとなっている。しかしその一方で、高線量の紫外線にさらされるリスクの高い野生植物については、調査がほとんど行われていなかった。本講演では、幅広い垂直分布をもつ野生植物や各種高山植物などに蓄積される紫外線防御物質に関して、演者の研究を中心にこれまでに得られている知見を紹介する。

日時
2013年12月13日(金) 15:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。常陸之國もんどころ。

第37回

第34回生命地球科学セミナーと共催

後藤 龍太郎 さん(東京大学・大気海洋研究所)

二枚貝における寄主性・共生性の進化

要旨

寄生や共生といった生物間の相互作用は、海洋の至る所で見られ、生物の形態の特殊化や種の多様化を促すと考えられています。海洋の主要な生物の一つである二枚貝類でも様々な寄生・共生が知られています。例えば、熱帯のサンゴ礁域に生息するシャコガイ類は光合成を行う褐虫藻を外套膜に共生させ、生活に必要な栄養素の多くを得ています。また、深海に棲むシロウリガイ類などは化学合成細菌との共生により、貧栄養な深海域での有機物獲得を可能にしています。このような相利的な関係の他にも、寄生性の甲殻類などによって、二枚貝が宿主として利用されることもあります。一方、宿主としてではなく、二枚貝自身が他の生物を利用する寄生者・共生者として振る舞う例が知られています。発表者が研究対象としているウロコガイ上科の二枚貝類は、海底に棲む動物の体表や巣穴に居候して暮らすユニークな生態を持っています。熱帯の浅海域を中心に著しい多様化を遂げており、上科全体での宿主の範囲は海底に暮らすほとんど全ての分類群に及びます。本発表では、ウロコガイ類がいかにして宿主との生活に適応し、多様化を遂げてきたのかについて、フィールドワークや分子系統解析から得られた知見を幅広く紹介します。

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日時
2013年11月20日(水) 17:00〜19:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A 205号室
懇親会
ありました。串好。

第36回

第33回生命地球科学セミナーと共催

野原 精一 さん(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター)

密かに初春の尾瀬を彩る微生物たち―湿原の低温環境下に活躍する化学合成微生物(アカシボ)の正体に迫る―

要旨

雪の表面に赤や緑や茶色などに着色する現象が広く知られ ている。これらは主に淡水産藻類で、氷雪藻(snow algae)と総称されている。氷雪藻は南極や北極などの極地だけでなく、スカンジナビア半島、ヨーロッパアルプス、ヒマラヤ、ロッキー山脈や日本の高山 帯などの積雪の多い地域でも見ることができる。雪の表面が赤くなったものを赤雪(あかゆき、紅雪)と呼び、藻類などが雪面に繁殖し赤くなる場合や中国大陸 の黄土地帯から舞い上がった黄砂の降下によって着色する現象が報告されている。雪の中で生活史の一部を過す微生物はクリオプランクトン (cryoplankton)といいクリオファイト(cryophytes)の中の藻類、菌類、バクテリアが含まれている。    尾瀬ヶ原では毎年5〜6月の融雪期に雪の赤褐色化 (アカシボ現象)がおきる。この現象は緑藻のPhacotaceae科Hemitoma sp.を含む粒子が原因とされてきた。この粒子の表面に付着した多量の酸化鉄のために雪が赤褐色に着色し、彩雪が著しい場合には、融雪水1mlあたり約 106個体の粒子が存在していた。これまで尾瀬の赤雪、いわゆるアカシボ(AKB)の正体は大きく2つの仮説に大別されていた。一つはある種の藻類(雪氷 藻)やバクテリアが増殖したという「藻類説」で、もう一つは無機質の鉱物が舞い上がったとする「鉱物説」である。これまで小林・福島(1954)が尾瀬に おける氷雪植物相として分類学的な記載をしているが、AKBの発生メカニズムついての研究は無かった。    そこで、「アカシボ研究グループ」では尾瀬地方 でのAKBの正体とその発生メカニズムを明らかにするため、毎年様々な観点から現象の解明を試みた。本セミナーでは尾瀬の彩雪現象の分布を明らかにし、尾 瀬地方に現れる彩雪現象の色彩や景観からのタイプ分けを行い、航空写真の解析や現地調査による確認を通じて尾瀬地方のAKBの分布と特徴について明らかに した。また、NHKの取材協力のもと厳冬期にも積雪下に豊富な液体の水とAKB粒子が存在し、融雪期にはそれが洪水のようになって雪面を覆い尽くす様子を ラジコンヘリによって捕らえた。また、電磁探査によって地下構造を面的に捕らえることに成功した。更に光学顕微鏡を直接尾瀬に持ち込んで、どの様な生物が 存在するのかを映像によって明らかにし、遺伝子解析から約50種類に及ぶ化学合成微生物群集であることを突き止めた。

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日時
2013年10月28日(月) 16:00〜18:00
場所
国立環境研究所 地球温暖化研究棟交流会議室
懇親会
ありました。あじくら。

第35回

高橋亮 さん(京都産業大学 総合生命科学部)

転写制御の進化におけるシス−トランス相互作用:

要旨

複数の下流因子に多面的な作用を及ぼすトランス制御因子に対し,対立遺伝子特異的に作用するシス制御因子は,その影響が遺伝子制御ネットワークのモジュール内部に留まるため,多面発現に伴う副作用を最小限に抑え,進化の素材となる変異を供給することが予測される.転写制御の進化に寄与するシス突然変異とトランス突然変異の相対的な重要性を見極める実験手法の一つとして,交雑個体における対立遺伝子特異的な相対発現量と親系統間の発現量の違いを対比する手法が提唱されている.しかしながら,この手法は交雑個体における対立遺伝子間の発現量の違いを全てシス変異に起因させ,シス−トランス間相互作用を想定していない.シミュレーション解析から,安定化選択下でシス−トランス間の補償的な進化が起きると,淘汰上ほぼ中立な突然変異の蓄積が系統間にシス−トランス不和合性をもたらし,結果としてシス突然変異の重要性が誤って高く見積もられる危険性が示された.このことはまた,集団間の生殖隔離を成立させる要因として,分断化選択下の適応的な分化よりも,安定化選択下のシス−トランス不和合性の成立が重要である可能性を示唆する.

日時
2013年9月24日(火) 17:30〜19:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 211号室
懇親会
ありました。ダイニングバー pond。

第34回

照井慧 さん(東京大学 農学生命科学研究科)

河川ネットワークにおけるカワシンジュガイのメタ個体群動態

要旨

淡水生態系はもっとも人為的なインパクトを受けてきた生態系タイプのひとつとなっている。生活史初期に魚類へ寄生するという特殊な繁殖生態をもつイシガイ類(Unionoida)は特に危機的な状況に直面しており、日本においても17種1亜種のうち75%を超える13種が環境省レッドリストに挙げられている。 カワシンジュガイ(および他のイシガイ類)は、貝礁(Mussel bed)と呼ばれる高密度の局所個体群を形成し、それらは宿主魚類による移動および宿主魚類から脱落後の水流による受動的な分散によって連結していると考えられる。そのため、メタ個体群としての動態を理解することは、本種の有効な保全を行っていくうえで重要な基礎的知見である。 本研究では、北海道朱太川水系におけるカワシンジュガイのメタ個体群構造を把握するため、1. 標識再捕獲・定置網を用いた宿主魚類による移動分散過程の把握、2. 流域の分布データを用いた個体群密度に影響する要因の解析を行った。その結果、1. 宿主魚類による移動は上流へ偏っており、かつ支流への移動も頻繁に生じていること、2. 上流からの個体移入ポテンシャルの代替変数である"上流側河川長"および"上流側合流地点数"が個体群密度に影響する重要な要因であることが明らかとなった。これらの結果は、上流への移動・下流への受動的な分散という河川生態系に独特な移動分散プロセスが、イシガイ類のメタ個体群の維持において重要であることを示唆している。

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日時
2013年4月17日 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。アジアン酒場門星(モンスター)。

第33回

第31回 生命地球科学セミナーと共催

清家 弘治さん(東京大学 大気海洋研究所)

地面の下の世界「巣穴」を探る―砂浜と深海の例―

要旨

穴があったら入りたい―恥ずかしい状況に陥った時に,穴があってその中に身を隠せればどれだけ助かることか…では,自然界に存在する穴は,誰が何のために作っているのでしょうか?海底に見られる無脊椎動物の巣穴は,その形成者の生息場所となるばかりでなく,海底面を三次元的に拡張するため海底生態系に大きな影響を及ぼします.本発表では,砂浜および深海底における巣穴についての最新の研究成果や,巣穴の解析から地中生物の"隠された生態"を明らかにした例を紹介します.

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日時
2013年2月27日(水) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A 111号室
懇親会
「酒と和惣菜 らしく」で開催しました

第32回

第30回 生命地球科学セミナーと共催

重田 康成 さん(国立科学博物館)

三畳紀前期の海洋環境と生物相ーロシア極東での知見

要旨

古生代末の大量絶滅事件により生物の大部分は死滅し、それまでの生態系は壊滅的な打撃を受けた。その後、生物はどこで、どのように生活し、生物多様性や生態系はどのように回復していったのか。ロシア極東のプリモーリエ(沿海州)地方には三畳紀前期の地層が広く分布し、地球環境や生物相の変遷が記録されている。演者による調査・研究の概略を紹介する。

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日時
2012年12月20日(木) 16:30〜18:00
場所
産業技術総合研究所第7事業所 326号室(国際セミナー室)
懇親会
「月の宴」で開催しました

第31回

第29回 生命地球科学セミナーと共催

川上 和人 さん(森林総合研究所)

ネズミの中心で、鳥をさけぶ 〜小笠原諸島の外来種駆除の功罪〜

要旨

ネズミと言えば、7割の人が浦安の白黒ネズミを思い出し、3割の人がトム&ジェリーを思い出します。トム&ジェリーと言えば、どっちがネ ズミだったっけって、時々混乱したりします。それはさておき、小笠原諸島では、外来生物の生態系への影響が大きな問題となっています。このため、侵略的外 来種の駆除事業が多数行われています。しかし、外来生物が生態系内で重要な機能を果たしている場合もあり、駆除そのものが生態系に影響を与えることもあり ます。例えば、ヤギ駆除後には、捕食圧から解放された外来植物が繁茂することも珍しくありません。今回は、ネズミの駆除と鳥の保全の話題を中心に、外来生 物駆除の光と影についてご紹介します。

ポスターはこちら

日時
2012年11月29日(木) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
「とん兵衛」で開催しました

第30回

岸 茂樹 さん(東京大・農学生命科学)

昆虫の繁殖行動をとりとめなく考える

要旨

私はこれまで昆虫の繁殖行動に特に興味を持って研究を行なってきました。しかし研究材料やテーマを好き勝手に選んできたため、まとまりがありません。今回は講演時間を長めにいただいたので、このまとまりの悪い研究結果についてとりとめなくお話してみようと思います。講演では大きく3つの話をします。まず、食糞性コガネムシの親から子への投資行動についてお話しします。次に、種間の性的相互作用である繁殖干渉についてお話しします。マメゾウムシを用いた実験や数理モデルからいくつかわかったことがあります。最後に、現在調査を行なっている三宅島の話をします。花と昆虫の関係についてわかったことを簡単にお話します。

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日時
2012年8月25日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第二エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
「オークラガーデン」で開催しました

第29回

第27回 生命地球科学セミナーと共催

丸岡照幸さん(筑波大・生命環境)

白亜紀-古第三紀境界の隕石衝突後に酸性雨は降ったのか?

要旨

白亜紀-古第三紀(K-Pg)境界(6550万年前)に起きた生物大量絶滅は隕石衝突が引きがねとなった。実際に大量絶滅を引き起こしたのは隕石衝突後に起きた「環境変動」のはずであり、そういった環境変動としていくつかのプロセスが提唱されている。しかし、そのうちのどれが真に重要であったのかは明確にはなっていない。このところ我々は酸性雨の証拠となる地球化学的指標のいくつかをK-Pg境界粘土層に見出している。これまでは酸性雨は白亜紀末の生物に対する脅威として考えられてこなかったが、その重要性を紹介したい。 

日時
2012年4月20日(金) 16:30〜18:30
場所
産業技術総合研究所第7事業所 国際セミナー室(326号室)
懇親会
「グンチャン」でありました。

第28回

栗山武夫さん(東京大・農学生命科学)

トカゲの色彩パタンの進化―捕食者に対応した地理的変異

要旨

動物の体色は、配偶行動や親子関係など種内でのコミュニケーションと、捕食者と被食者などの異なる種間で交わされるものに分けられる。被食者の色彩パタンは捕食圧の下で、種内関係よりも強い自然選択を受け、迅速に進化する。セミナーで紹介する内容は、伊豆諸島と伊豆半島に生息する被食者(オカダトカゲ)の色彩パタン(胴体のストライプ模様・尾の青さ)が地域によって異なること、その淘汰圧として異なる色覚をもつ捕食者相(イタチ:哺乳類、シマヘビ:ヘビ類、アカコッコ:鳥類) にさらされていること、さらにその被食者―捕食者系がどのような進化史をたどってきたのかを分子系統地理学により解明する試みの3点である。

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日時
2012年2月25日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 111号室
懇親会
ありました。庄や。

第27回

横山潤さん(山形大・生物)

タニウツギの花形態にあたえる訪花昆虫と種間交雑の影響

要旨

被子植物は、その多くが昆虫に花粉媒介を依存している。虫媒花の形態は、植物と送粉者の相互作用にとって重要な形質であり、送粉者や盗蜜者の行動や形態的特徴に対応した形態を備えるように、強い自然選択を受けていると考えられる。一方、被子植物は近縁種が共存する状況下で、しばしば種間交雑を起こす。雑種個体は、その後の雑種後代の形成や戻し交雑の過程で新しい形質を持つこともある。このような場合、花形態の進化はより急速に生じる可能性がある。本講演では訪花者、特に盗蜜者と種間交雑が花形態の進化に及ぼす影響を、東北地方に分布するタニウツギを対象として解析した成果について報告する。 

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日時
2012年1月19日(木) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 205号室
懇親会
ありました。案山子。

第26回

佐々木崇夫さん(アリゾナ州立大・生物)

蟻の心理学

要旨

集団生活は個体の生活に比べて利益をもたらすことがある。この発表では特に「集団的知性(collective intelligence)」という集団生活の利益に注目する。集団的知性とは、個々の脳を組み合わせることにより、集団が個体よりも優れた認知能力を持ち、そのため正確な意思決定を行うことが可能になるとするものである。しかし今までの研究では、集団の認知能力と個体のそれとを比べることがほとんどなかった。ここでは、集団意思決定のモデルとしてよく使われる巣選び蟻(ムネボソアリ)を用いた。社会性昆虫はグループ内の調和行動から、グループ自体が一つの個体、「超個体(superorganism)」と呼ばれることがある。この特性を活かし、個人の認知能力を計る心理学の実験方法をコロニーと個体の両方に用いて、それぞれの意思決定結果を測定した。実験結果は、コロニーが個体よりも1)合理的な意思決定をし、2)大きな認知要領を持ち、3)繊細な知覚を持つことを示唆した。これら結果の応用として、集団生活の進化、意思決定の最適化、また群ロボット等についても言及する。     

日時
2011年12月19日(月) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 生物農林学系棟F 607号室
懇親会
ありました。シーアン。

第25回

岩崎貴也さん(東京大・院・総合文化)

複数種比較が明らかにする「森」の生物地理

要旨

生物の分布変遷の歴史は、集団の分化の歴史そのものであり、それは進化の第一歩である。近年、様々な生物種について分子系統地理学的研究が行われ、それぞれの種の分布変遷の歴史が議論されてきた。しかし、本来、遺伝構造は歴史以外の様々な要因でも形成され得るものであり、1種の遺伝構造だけでは信頼性の高い歴史の議論を行う事が難しい。本発表ではまず、似た分布を示す複数の温帯林樹種の遺伝構造を地理情報システム(GIS)上で比較し、共通の遺伝構造を見出すことで、「温帯林」の分布変遷の歴史について考察を行う。次に、生態ニッチモデリングを用い、分子系統地理学的研究から示唆された歴史仮説を検証した研究例についてもお話しする。最後には、「分子系統地理学」の次の形として、今回のような複合的アプローチで生物の分布変遷の歴史を考える「新しい歴史生物地理学」の形についても議論したい。

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日時
2011年11月12日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。笠真。

第24回

長谷川陽一さん(農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所)

花粉および種子の散布パターンから見たクリの繁殖戦略に関する研究

要旨

花粉と種子の散布は、基本的に移動のできない植物が、交配と分布拡大のために移動するステージであり、生態学的にも進化生物学的にも興味深い。しかしながら、それらの移動パターンをヒトの目で直接に確認することは難しい。そこで本研究では、花粉一粒ずつのDNA解析によって花粉親を特定する技術を開発するとともに、種子と実生のDNA解析によって落葉広葉樹天然林においてクリの花粉・種子散布パターンを明らかにした。さらに、これらの技術と野外観察をあわせて用いることでクリの開花フェノロジー、受粉時と結実時の花粉組成の違い、昆虫による花粉の移動パターン、げっ歯類による種子の移動パターン等を調べ、クリの繁殖戦略を明らかにすることを試みた。

ポスターはこちら

日時
2011年10月22日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。一成。

第23回

奥圭子さん(中央農業総合研究センター)

ハダニ類における捕食リスクと行動

要旨

捕食リスクにより被食者は行動や形態などを可塑的に変化させ、自身の生存率を高めようとする。このような可塑性は様々な生物種で報告されている。植物葉面を生息場所とするハダニ類は、捕食者であるカブリダニ類の脅威にしばしば曝される。ハダニはどのようにしてカブリダニの捕食を逃れるのだろうか?本セミナーでは、カンザワハダニの捕食回避行動と寄主植物の関係と、捕食回避の視点を絡めることで見えてきた雌の配偶戦略について紹介したい。

ポスターはこちら

日時
2011年7月2日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 205号室
懇親会
ありました。一太郎。

第22回

細川貴弘さん(産業技術総合研究所)

体内共生微生物が引き起こす昆虫類の多様化:その相互作用を解明する

要旨

多くの昆虫類は体内や体表に共生微生物を保持している。これらの共生微生物は宿主昆虫を苦しめる寄生者となっている場合もあるが、宿主昆虫に利益をもたらす相利共生者となっている場合も多い。後者の場合、寄生昆虫が受ける利益とはさまざまであり、たとえば栄養分を受け取ったり、物質代謝を補助してもらったり、捕食者や病気から守ってもらったりである。その結果として宿主昆虫はより厳しい環境にも適応できるようになるので、共生微生物は昆虫類の多様化と繁栄を引き起こした要因の一つでもあると考えられる。本講演では、演者がこれまでに進めてきたカメムシ類とゾウムシ類の研究を中心に、特に共生微生物の全ゲノムシーケンスから見えてきた宿主ー共生微生物間の相互作用にスポットを当てて紹介する。

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日時
2011年6月18日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 生物農林学系棟F 607号室
懇親会
ありました。百香亭。

第21回

杉浦真治さん(森林総合研究所)

小笠原諸島において外来種が在来生物相に及ぼす影響

要旨

隔離された海洋島では、独自の進化をとげた多数の固有種が見られる。しかし近年、外来種によって多くの固有種が危機にある。日本の代表的な海洋島・小笠原諸島は、小面積にも関わらず多くの固有種が見られるため、近々世界遺産(自然遺産)に登録される予定だ。しかし、世界の他の海洋島と同様、外来種による影響は深刻である。本セミナーでは、環境省の研究プロジェクトにおいて行ってきた研究を通して、小笠原諸島における外来種が在来種に及ぼす影響を紹介する。登場する分類群は、陸貝、リクウズムシ、ハチ、アリ、甲虫、蛾、樹木など多岐にわたる。また、各研究トピックをなぜ始めたのか、そしてどのように進めてきたのか、個人的なエピソードも加えてお話ししたい。

ポスターはこちら

日時
2011年5月28日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。千年の宴。

第20回

山道真人さん(総合研究大)

表現型可塑性の迅速な進化

要旨

近年になって、生物の進化的現象(適応や種分化)が生態学的現象(個体群動態や群集構造、生態系機能)に影響を与え、これが更に進化動態にフィードバックする "eco-evolutionary feedback" が存在することが明らかになってきた。本研究では、この視点に表現型可塑性を加え、表現型可塑性の進化動態と個体群動態のフィードバックについて、理論的な解析を行った。今回は、理論研究からわかってきた表現型可塑性と個体数変動との間の関係性と、動物プランクトン(ワムシ)と植物プランクトン(イカダモ)のケモスタット培養系を用いた実証研究の展望を紹介する。

ポスターはこちら

日時
2011年4月23日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。百香亭。

第19回

つくば生命地球科学セミナー / つくば藻類・プロティストフォーラム / つくば進化生態学セミナー 共催企画

後藤和久(千葉工大) 白亜紀末の大量絶滅と小惑星衝突

大野宗祐(千葉工大) 天体衝突が引き起こす環境変動と大量絶滅 

柏山祐一郎(筑波大) 回復過程から読み解く? 絶滅過程のブラックボックス

白亜紀末の大量絶滅 〜How to collapse the life?〜

要旨

日時
2011年3月3日(水) 15:00〜17:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
あります。 詳しくは、こちらをご覧ください。

第18回

中田兼介さん(東京経済大)

円網とクモの環境認知

要旨

たんぱく質の糸を組み合わせてできるクモの円網は、第一に餌を捕獲するためのトラップであり、造網行動について採餌効率の最適化の観点から多くの研究がなさ れている。一方、造網性クモには優れた視覚を持たない種が多く、もっぱら網の糸を伝わる振動にたよって情報を入手し環境の状態を認知する。その意味で網は 体外に張り巡らされた感覚器でもあると言える。今回は、最初に網形態が採餌効率を高めていると考えられる証拠について紹介し、その後、クモが造網後に網糸 にかかる張力を変化させる事で網の感度を調整し入ってくる情報を制御している事、また網サイズの調整行動の種間変異が、網を使った情報獲得から得られる利 益の種間差で説明できる事をお話したい。

日時
2011年2月5日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 110号室
懇親会
ありました。灯禾軒。

第17回

林 文男さん(首都大学東京・理工・生命科学)

雌雄の拮抗的共進化 カワトンボ類の精子の掻き出しは左利き?

要旨

昆虫の交尾器の進化速度は速く,形態的にも,機能的にも実に多様化している.そこにはいろいろな選択がかかると考えられる.我々は,カワトンボ類において, オスの交尾器が左右対称な種から左右非対称な種までいろいろな段階があることを発見した.カワトンボ類のオスは,交尾器を使ってライバルオスの精子を掻き 出すことが知られている.そこで,彼らの左右非対称な交尾器の機能と左右非対称性の進化的出現パターンについて,雌雄の拮抗的共進化という観点から明らか になったことを紹介したい.

ポスターはこちら

日時
2011年1月22日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。 ガマの油。

第16回

海老原 淳さん(国立科学博物館 植物研究部)

地味で複雑なシダ植物の魅力 人的ネットワークが解き明かす種分化ネットワーク

要旨

「種子を持たない維管束植物」であるシダ植物は、世界に約10000種、日本に約650種の小所帯の生物群だが、研究者人口は決して少なくない。なぜならば、 シダ植物を研究材料として用いることによって、種子植物ではできないような研究が可能になるからである。どれも同じように見えるのに、様々な種があり、たくさんの組み合わせの雑種があり、倍数性は変化に富む。一見敷居の高い生物群だが、ひとたびそれを乗り越えれば、極めて魅力的な研究材料となる。それに加 えて、日本では充実した人的ネットワークが、外国では決して実現できないような緻密な研究を可能なものにしている。本セミナーでは、シダ植物を用いた発表者の研究、特に日本における網状進化や、DNAバーコーディングによる野生配偶体(前葉体)集団の解析などを紹介する。

日時
2010年12月18日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 205号室 いつもと部屋が異なります。
懇親会
ありました。 XI'AN(シーアン)。

第15回

第21回 生命地球科学セミナーと共催

伊藤 洋 さん (国立環境研究所 環境リスク研究センター)

放散と絶滅の普遍性における因果律について

要旨

生物の放散と絶滅は属以上のあらゆる分類クラスにおいて普遍的にみられる現象である。本研究はこの現象が、自然選択による決定論的な進化動態として生じ得ることと、その機構が普遍的であることを、数学的解析、シミュレーション解析により示した。さらに、放散と絶滅により生態系全体が遷移し続けることを示し、この過程において複雑な生態系が維持される条件を導いた。今回の発表では、それらの進化動態のシミュレーション結果を主に紹介し、直感的な説明をします。

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日時
2010年12月4日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。スペインバル ONCE。

第14回

池田 啓 さん(東大・院・理)

適応進化を担う遺伝的基盤を明らかにする系統地理 ―日本産高山植物におけるフィトクロムを例に―

要旨

系統地理学は、中立な遺伝子を用いた種内レベルの遺伝的変異を明らかにすることで、生物が持つ分布形成の歴史を明らかにしてきた。しかし、遺伝子は全てが中 立に進化しているわけではなく、自然選択を受けて進化しているものもある。そのため、数多くの遺伝子を用いた系統地理学を行うことで、中立な遺伝子が作る 分布形成の歴史を反映した地理構造を明らかにするとともに、自然選択の影響を受けた地理構造を持つ、地域適応に関わる遺伝子を見つけ出すこともできるはずである。本セミナーでは、日本産高山植物における系統地理学を例に、フィトクロムが地域適応に関わることを示した研究を紹介する。

日時
2010年11月13日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。笠真。

第13回

第20回 生命地球科学セミナーと共催

井上 潤 さん(東京大学・大気海洋研究所)

分子データを用いた古代魚の分岐年代推定

要旨

生物進化の研究には系統樹が必要である.系統樹に時間軸を設定すると,形態形質やゲノム構造の変異速度を推定するだけでなく,地球環境の変動と種の歴史を比較できるようにもなる.近年になって多様性研究に必要な分子配列データが急速に蓄積したうえに,化石情報を総合的に盛り込んだ分子分析が登場し,ようやく種の分岐年代を推定できるようになった.本セミナーでは最新の年代推定方法を紹介するとともに,時間軸付き系統樹に基づいて古代魚の進化を考察する.

日時
2010年10月9日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 110号室
懇親会
ありました。つくばホルモン。

第12回

沓掛展之 さん(総研大・葉山,JSTさきがけ)

哺乳類における社会進化:社会的形質は淘汰圧を生み出すか?

要旨

構成個体が安定した群れを形成する動物は、多様な様式・機能をもつ社会交渉・コミュニケーションを群れのなかで行い、その結果として、多様な性質を持つ社会関係、より巨視的には社会的ネットワークを個体間で形成する。進化・行動生態学の関心のひとつとして、これらの社会的形質が個体(または遺伝子)の適応度 にどのような影響を及ぼすか、どの程度強いものであるか、自然淘汰や性淘汰などの淘汰圧とどのように関連するか、という問いが挙げられる。現在までに、社会的形質が生み出す淘汰圧は、血縁淘汰や進化ゲーム理論によって概念化・分析され、多くの実証的研究とともに検証されてきた。しかし、寿命が長く、行動形質が可塑的である動物では、社会的形質と適応度の関係を検証する作業が困難であり、多くの未解明なテーマが存在している。発表では、講演者が現在までに行ってきた哺乳類に関する研究から、動物の社会進化を理解する試みを紹介したい。

日時
2010年9月11日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。千香華味。

第11回

深野祐也 さん(九州大学)

外来種で進化生態学 ブタクサとブタクサハムシの急速な進化

要旨

外来種は,防除や管理などの応用研究の対象としてだけでなく,進化生態学的研究の材料としても注目されてきた.例えば,多くの外来植物は原産地の天敵から逃れているため,天敵に対する抵抗性が低下させ,成長や繁殖に投資するような進化が急速に起きるという仮説(EICA仮説)が,数種の外来植物で検証されている.日本に侵入したブタクサも,長い間原産地の天敵から解放されていた.しかし,ブタクサの天敵のブタクサハムシが1995年に日本に侵入し,現在日本のブタクサは激しい食害を受けている.本セミナーでは,天敵からの解放と再融合に伴って,日本に侵入したブタクサの抵抗性が,どのように急速に進化しているのかを検証した研究などを紹介する.

中川さやか さん(東京大学)

無融合生殖種の遺伝的多様性獲得メカニズム ニガナ種群の集団遺伝解析からのアプローチ

要旨

一般に、無性生殖種の集団は有性生殖種の集団に比べて遺伝的多様性が低いと考えられる。無性生殖のひとつに、無融合生殖がある。被子植物では、無融合生殖種は、花粉や胚珠を形成するが、減数分裂や受精をせずに種子を形成する。無融合生殖種において、集団内に遺伝的変異が存在することが先行研究で知られているが、その理由はよくわかっていない。そこで、日本全土に広く分布する3倍体の無融合生殖種のニガナ(キク科)と局所的に分布する2倍体の近縁な有性生殖種を材料に、遺伝マーカーを用いて遺伝的多様性の比較を行った。本セミナーでは、遺伝構造データから推測された、いくつかの遺伝的多様性獲得メカニズムについて議論する。

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日時
2010年7月24日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。つくば丸一水産。

第10回

松崎慎一郎さん(国立環境研究所)

フナの産卵数を決める局所環境要因とランドスケープ要因

要旨

フナは、繁殖期になると湖から河川、さらに河川から水 路や水田へと移動し産卵を行う。産卵場所、成育場所である水田水域は、近年の河川改修や圃場整備による移動経路の分断化、侵略的外来種の影響を受け、不健 全化が著しい。そのため、フナの個体群存続は危ういものとなっており、漁獲高も減少している。本発表では、ラムサール条約登録湿地である福井県三方湖流域 において行ったフナの広域産卵調査の結果について紹介し、産卵場所や仔稚魚の成育場所に関わる局所環境要因とランドスケープ要因について考察する。得られ た結果をもとに、産卵ポテンシャルマップを作成し、水田魚道の効果的な設置場所の提案を行った。また、今年から、フナ類の遺伝的モニタリングを開始した。 こちらの研究についても簡単に紹介したい。フナ類は水産有用魚であり、これまで育種や放流が盛んにおこなわれてきたため、フナ類の遺伝的構造や遺伝的多様 性は大きく変化している可能性がある。霞ヶ浦流域、三方湖流域をコアサイトとして、フナ類の遺伝的撹乱の状況、過去のサンプルと比較した遺伝的多様性の変 化、地域個体の残存・再生の可能性について明らかにすることを目的とした研究を始めた。

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日時
2010年6月26日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。縁(えにし)。

第9回

池田紘士さん(森林総合研究所)

飛翔能力の退化に伴う生態進化と地理的分化―シデムシ科の場合―

要旨

飛翔能力は、長距離の分散、広範囲にわたる餌・配偶者探索などを可能にする能力であり、昆虫は飛翔能力を獲得することによって様々な地域へと分布を拡大した。しかし、飛翔器官の形成及び維持には多くのエネルギーが消費されるため、様々な分類群において退化が生じている。飛翔能力は生活史との関連が深いため、退化には様々な生態形質の進化を伴う場合が多い。本発表ではこれまでの研究によりシデムシ科ヒラタシデムシ亜科において明らかにされた、飛翔能力の退化に伴う食性・繁殖形質の進化について紹介する。また、飛翔能力の退化が個体群間の遺伝分化に与える影響について、ヒラタシデムシ亜科の複数種を比較して明らかにした結果についても紹介したい。

日時
2010年5月15日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。串とんぼ。

第8回

成田 聡子さん(農業生物資源研究所)

共生細菌Wolbachiaの感染よって引き起こされるキチョウの性転換現象と細胞質不和合 〜その相互作用と共進化

要旨

共生細菌ボルバキア(Wolbachia)は、節足動物の30%以上の種に感染しているとされており、自 身の拡散が最大限になるように宿主の性や生殖を操作することが知られている。ボルバキアは、細胞質不和合、オス殺し、メス化、単為生殖などの方法を用い て、感染メスのみを宿主集団中に蔓延させることができる。日本産キチョウ(Eurema mandarina)においては、1系統のボルバキアに感染して細胞質 不和合が起こる個体群と2系統のボルバキアに重複感染してオスからメスへ性転換している個体群が見つかっている。今回のセミナーでは、現在までの研究で明 らかになってきたキチョウにおけるボルバキアによる生殖操作、その分子機構、生殖操作によって宿主キチョウが集団レベル・進化レベルでどのような影響を受 けるのかについて紹介する。

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日時
2010年4月24日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。XI'AN(シーアン)。

第7回

土松 隆志さん(東京大・総合文化)

シロイヌナズナ属の自家不和合性崩壊における突然変異のパターンを探る

要旨

自家不和合性とは、被子植物においてもっとも一般的な自殖(自家受精)回避の遺伝的メカニズムである。自家不和合性は、適応度の低い自殖由来の種子の生産を防ぐことができるにも関わらず、何度も繰り返し崩壊して自殖性の高い系統が起源したことが知られている。自家不和合性 崩壊と自殖性については、適応的意義に関する研究が蓄積されてきた一方で、その平行進化をどのような突然変異が担ったのかという知見はいまだ限られてい る。本セミナーでは、アブラナ科シロイヌナズナ属において自家不和合性崩壊に関わった突然変異と、それらの自殖性の進化に果たす役割について紹介する。また、シミュレーション解析から予測された、自家不和合性崩壊に関わる突然変異における一般的なパターンについても議論を行いたい。

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日時
2010年3月27日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 111号室
懇親会
ありました。浪花ろばた八角。

第6回

林 岳彦さん(国環研)

性選択 2.0:性的対立説の理論的位置づけとその進化動態

要旨

生きることとモテることはどちらが大変だろうか。大別すると、生物の進化は「生存を巡る競争」と「繁殖相手を巡る競争」により引き起こされると言える。後者の過程(あるいは機構)は「性選択」と呼ばれ、ダーウィン以来進化学の中心的テーマの一つとして研究が行われている。 実は、90年代の終わりからゼロ年代にかけて「性選択」に関する議論は(今更ながらの)メジャーアップデートを果たしている。その中心に存在したのはオスメス間の利害の対立に着目した「性的対立」という概念である。本講演では前半において、「性的対立説」も含めた性選択に関する諸理論について現在の視点か らの整理を試みる。特に、各性選択理論から示唆される進化動態は同時に生じやすいことと、その中で敢えて主要な進化的動因を見極めるためには定量的な研究 が必要となることを述べる。後半では講演者自身が行った性的対立の進化動態の理論的研究について紹介を行い、種分化や繁殖形質の遺伝的多様化における性的 対立の役割について議論する。

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日時
2010年2月20日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。灯禾軒。

第5回

馬場友希さん(農業環境技術研究所)

クモのユニークな生態 ― 網と性的二型に注目して ―

要旨

クモは野外から屋内までどこにでもみられる普遍的な生物であるが、他の生物にはみられないユニークな生態をもつ。一つは「網」を張るという行動である。クモ は自ら生成したタンパク質の糸を用いて餌捕獲用の罠を構築するが、そのデザインや構造は種によって異なっており、このように「体外」構造を多様化させた生 物は他に類をみない。もう一つは極端な形態の性的二型を示す点である。クモは形態の性的二型が著しく、雌雄でまるで別種のように見える。その性的二型の度 合い自体も種間・グループ間で大きく異なることから、性差をもたらす進化的要因を研究するうえで興味深い材料といえる。演者はこれらの特徴に注目して、これまでクモ類の進化生態に関する研究を行ってきた。本セミナーでは、1)他のクモ類の網に侵入して餌盗みを行うチリイソウロウグモの宿主適応の仕組みと、2)アシナガグモ類の牙長にみられる性的二型の種間差に関する研究の2題を紹介する。

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日時
2010年1月30日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。千香華味。

第4回

堤 千絵さん(国立科学博物館 筑波実験植物園)

木登りした植物たち,その進化と適応を探る

要旨

世界には木の上で生活する植物がいる.寄生食物とは違い,宿主から栄養分を摂取せず,他の植物の上で生涯をすごす.熱帯ではごく普通に見られ,街路樹にはたいてい着生植物がついている.着生植物がどのように木登りしたのか,シダ植物やラン科クモキリソウ属を例に紹介する.特にクモキリソウ属について,着生種と近縁な地生種を比較した結果,共生菌が生育場所の分化に関わっている結果が得られてきた.ラン科植物の種子は,共生菌が感染してはじめて発芽する.着生種と地生種から単離した菌の遺伝子解析や,共生培養による植物の生育比較の結果を紹介し,着生植物の進化に共生菌の変化が関与した可能性を示す.

日時
2009年11月14日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 205号室
懇親会
ありました。百香亭。

第3回

佐藤幸恵さん(農業環境技術研究所)

ダニの社会  スカトロジーと血縁選択

要旨

「社会のダニ」という言葉はよく耳にするものの、「ダニの社会」という言葉に戸惑う人は多いであろう。ダニというと吸血性のマダニがイメージされがちである が、マダニやツツガムシといった動物寄生性のものだけでなく、植物寄生者(ハダニやフシダニ等)、その捕食者(カブリダニやナガヒシダニ等)、さらにそれ らを捕食する者(ハモリダニやテングダニ等)、そして分解者(ササラダニ等)と、様々である。そして中には、アリやハチ類といった真社会性昆虫のように高 度に発達した社会ではないものの、集団を形成し共同保育を行うといった社会性をもつものもいる。本セミナーでは、植物寄生性のダニであるハダニ類の中で、 比較的発達した社会性をもつスゴモリハダニ属における「共同トイレの変異」と、本属に属するススキスゴモリハダニにおける「血縁選択とオス同士の殺し合い 行動の地理的変異、そして2型」に関する研究を紹介したい。

日時
2009年10月31日(土) 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。ゆず家。

第2回

森長真一さん(東京大・総合文化)

遺伝子から迫る適応的分化:イブキ・ハクサンハタザオのゲノム変異と進化

要旨

生物の分布拡大は、適応度を増加させる大きな要因の一つであり、新たな環境に適応することで達成される。このような新たな環境への適応は、結果として新たな 形質を進化させ、さらには地理的な隔離を介して異所的・側所的種分化を促進させうる。つまり、環境適応は生物多様性を生み出す主要な原動力である。では、 生物は如何にして分布を拡大し、分化をとげるのか? 近年のゲノム科学の発展は、遺伝子機能の進化から野生生物の分布拡大・分化プロセスを紐解く事を可能にしてきた。そこで現在、モデル植物シロイヌナズナに 最も近縁なハクサンハタザオとその高地生態型であるイブキハタザオを対象に、低地から高地への分布拡大と適応的分化の解明に取り組んでいる。発表では、野 外集団におけるゲノム多型解析で明らかとなってきた機能遺伝子を分化パターンを紹介しつつ、生態学的研究における遺伝子解析の意義に関しても議論したい。

日時
2009年9月26日 16:00〜18:00
場所
筑波大学 第2エリア 総合研究棟A 107号室
懇親会
ありました。串とんぼ。

第1回

奥山雄大さん(国立科学博物館 筑波実験植物園)

網羅的種間比較からチャルメルソウ類多様化の秘密に迫る

要旨

9属約80種からなるユキノシタ科チャルメルソウ類は、特に北米と日本で際立った多様化を遂げており、また遺伝学的に扱いやすいこと、花の形が風変わりであり、かつ多様であることなどから、被子植物の種分化、多様化のプロセスやメカニズムを解明する上で大変興味深くまた優れたモデルである。本発表では、種間比較と系統学の方法論によって、チャルメルソウ類の起源およびその多様化の秘密にどこまで迫ることが出来たかをまず紹介する。特に花形質の多様性のパターンが送粉者に対する適応として生じていることを示した上で、日本産チャルメルソウ属の種分化を直接引き起こしたと考えられる花の匂いについての驚くべき最新の知見を示したい。最後に、ゲノムレベルでの分子遺伝学的な手法を非モデル系であるチャルメルソウ類に応用し、生態学的な研究と組み合わせることでいかに先駆的な知見を得るかについての展望についても述べたい。

日時
2009年7月11日 16:00〜18:00
場所
筑波大学 生物農林学系棟 F607号室
懇親会
ありました。炙り屋 びん。
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